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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員 第1章(2) 「戦争を、『火種』を起こさなくっちゃならねえんだよ。 止めるな、今のこの状況が一番危険なんだって事にどうして気づかないの!? このままじゃイギリス清教は十字教内で孤立する!! 無用心に学園都市とのパイプなんて保ってるから、 ローマ正教から目を付けられるような羽目になってるんだろうが!!」 イギリス清教からの『客』シェリー=クロムウェルは 上条と美琴のコンビと相性のいい相手とは言えなかった。 シェリーの使役する『ゴーレム』はいくら破壊してもシェリーの意識がある限り、 何度でも体を再構成してしまう。 美琴は磁力で『ゴーレム』の動きを封じるのだが、 その度に『ゴーレム』の体の一部を構成され、 それらを避けるのに集中力を割かなければならなかった。 『警備員』の使う銃弾は跳弾するため却って危険であり、 その他の火力のある兵器も役に立つとはいえなかった。 (くっ、どうする!? 『ゴーレム』の足踏みが引き起こす揺れで、まともに接近することも出来ない。 遠距離からの攻撃も意味を成さないし、 ここは多少無理をしてでも突っ込むしかないか?) 上条が美琴に作戦を伝えようとした、その時… 美琴の背後に『ゴーレム』の『腕』が構成されていた。 美琴は何か考え事をしているようで、気付いていないようだった。 「美琴ーーー!!!!」 「え?」 上条は咄嗟に突き飛ばすようにして美琴に突っ込む。 そして『ゴーレム』の『腕』が上条を押し潰した。 「当麻、当麻!?」 しかし押し潰されたかと思った上条だったが、 『ゴーレム』の腕には亀裂が走り回り、そしてガラガラと崩れていく。 そして瓦礫となった『ゴーレム』の『腕』の下から 泥だらけになった上条が這い出てきた。 「当麻、大丈夫!?」 「ああ、それより美琴こそ怪我はないか?」 「ごめんなさい。 当麻に嫌われるようなことをしただけじゃなくて、迷惑まで掛けて…」 「嫌われる? 何を言ってるか分からないが、大切な人を助けるのが迷惑なもんか。 それよりも美琴が無事で良かった」 再びゴーレムの足踏みによる激しい揺れに転びそうになる美琴を上条は支える。 「このままじゃ埒が明かない。 俺はこれからちょっと無理やり突っ込んで来るから、援護を頼む」 「そんな無茶よ!!」 「大丈夫だって、これが終わったら美琴に伝えたい大切なこともあるしな」 「さっきも言ってたけど、それって…」 美琴は上条の機嫌が悪い時に大事な話があると言われて、 どうしても嫌な考えに囚われてしまっていた。 別れ話をされるのではないかと不安だった。 先ほどもそのことを考えていて注意力が散漫になっていたのだった。 「とにかく大事な話があるから絶対に帰ってくる。 それじゃあ、また後でな!!」 そう言って上条はゴーレムに向かって走り出すのだった。 「お前も分かってるんだろ、『幻想殺し』!! ローマ正教はいよいよマジになって戦争を起こそうとしている。 このままじゃイギリスは辺り一帯の国々から包囲されてお仕舞いよ」 「…」 シェリーの言っていることは上条にも分かった。 それでも上条が守るべき世界を蹂躙しようとするシェリーを放ってはおけなかった。 「悪い、それでも俺の世界を壊そうとするお前を見逃すわけにはいかない。 お前がイギリスを大事に思うように、俺も俺の世界を守らなきゃいけないんだ」 上条はシェリーの造り上げた『ゴーレム』の『エリス』に触れると、 再び再構成される前にシェリーへと右拳を振るう。 気を失ったシェリーを見下ろしながら上条は呟くように言った。 「出来ることなら、お前が守りたいものも守ってやりたい。 でもそのためにはどうすればいい!?」 上条は最後だけ語気を荒げて言った。 イギリスにはかつて助け出した少女もいる。 出来ることなら彼女も含めて救えるものは全て救ってやりたい。 しかし全てを救うには上条はあまりに小さく、そして無力だった。 「当麻!!」 上条は自分の名前を呼ぶ声に振り返る。 そこには何に代えても守ると誓っている少女の姿があった。 全てを救うには上条は無力かもしれない。 それでも上条は手の届く範囲の人間、 そして一番近くにいる少女のことは絶対に守り抜くと誓うのだった。 最終下校時刻は結局過ぎ去ってしまったので 『執行部』の仕事を言い訳に上条は美琴を部屋に招いていた。 美琴が作った作った夕食を食べながら上条はやはり餌付けされてることを再認識する。 そんなことを思いつつ上条が美琴に目をやると 何処か美琴は落ち着かない様子でソワソワしていた。 「何で美琴さんはそんなに挙動不審なんでせうか?」 「当麻が大事な話があるって言ってんじゃない? それで当麻から話を聞くのが、怖くて…」 「怖い、別に上条さんは怪談話をしようってわけじゃないんですが…」 「馬鹿、そういう意味じゃないわよ!! その…別れ話をされるんじゃないかって不安なの!!」 「なっ、美琴は俺と別れたいのか!?」 「何でそうなるのよ!? 機嫌が悪かったのはそっちじゃない!?」 「あー、ゲコ太の件か? まあ確かにあの時は面白くなかったような…」 「…私のこと嫌いになったわけじゃないの?」 「なるわけないだろ、上条さんはいつまでも美琴さん一筋であります!!」 美琴はよほど不安だったのか少し目に浮かんでいた涙を拭うと、 いつもの調子に戻った様子で言った。 「じゃあ大事な話って一体何なのよ。 紛らわしい言い方して、くだらないことだったら許さないんだから!!」 「紛らわしい言い方って、美琴が勝手に勘違いしただけじゃねえか!?」 「う、うるさいわね、さっさと話しなさいよ!!」 すると今度は何故か上条の方が挙動不審になる。 そんな上条を見て美琴は何故か急に帯電を始める。 「まさか、浮気したとか言うんじゃないでしょうね!?」 「ちょっと、何で帯電してるんでせうか!? さっき言っただろ、俺は美琴一筋だって」 「じゃあ、さっさと話しなさいよ!!」 「あー、もう!!」 上条はそう言うとカバンの中から一つの包装紙に包まれた長方形の箱を取り出す。 そして美琴の目の前に置いた。 「俺からのプレゼントだ、開けてみてくれ」 思わぬ上条のプレゼントに美琴は驚きながらも、 包装紙を丁寧に剥がすと箱を開けてみる。 「…可愛い」 そこに入っていたのは小さなハート型のネックレストップに 小さなダイヤモンドがあしらわれたネックレスだった。 「実はそれペアネックレスなんだ」 上条はそう言うと自分の首からネックレスを取り外し、美琴に手渡す。 上条のものと合わせるとより大きなハートの形になるようになっていた。 「大事な話っていうのは俺と美琴の関係なんだ。 今までは恋人っていうよりも、何処か友達の延長線にいた気がするんだ」 「確かにそうかもね」 美琴は上条にネックレスの片割れを返しながら答えた。 「そして仕事の時は『相棒』って感じで色んな事件に当たってきた。 だからさ、仕事だけじゃなくて私生活でもパートナーになって欲しいかなって…」 「え?」 「まあ、そのまんま言葉の意味通りです」 「…ちゃんと言ってくれないと分からないわよ!!」 「これでも上条さんは勇気を振り絞っていったんですが…」 「…」 しかし美琴は上条を正面から見据えたまま、目を逸らそうとしない。 よほどちゃんとした言葉にしないと気が済まないらしい。 上条は深く溜息を吐くと、美琴の目を正面から見据え返して言った。 「これからは俺と一緒になることを前提に付き合って欲しい、駄目か?」 しばらく沈黙が続いた後、美琴はポツリと呟くように言った。 「…しい」 「へ?」 「嬉しいって言ってるのよ、馬鹿!!」 「何で嬉しいのに怒ってるんでせうか!?」 「別に怒ってないわよ!!」 「いーや、怒ってるね。 上条さんには美琴のことは何でもお見通しですことよ」 「ほう、そこまで私を怒らせたいと… 久しぶりに電撃のキャッチボールでもしてもらいましょうかね?」 「ひぃっ、ご勘弁を!!」 すると上条と美琴の間に自然と笑いが起きる。 夕食の片付けが終わると、二人は寄り添うようにしてベッドの上に腰掛けて座った。 「ねえ、一つ聞いていい?」 「何だ?」 「さっきの話、本当にファーストフード店でするつもりだったの?」 「そういえば確かにファーストフード店でするような話じゃないな」 「本当に当麻って何処か締まらないわね」 美琴はクスクス笑いながら言った。 「うっ、面目ない。 でも何としても今日中に伝えたかったんだ」 「やっぱり覚えててくれたんだ」 「まあな」 二年前の今日、上条と美琴は初めて出会った。 学園都市のとある飲食店で起こった火災事故。 当時、小学六年生だった美琴は一人店内の中に取り残された。 もう駄目かと思った時に救いの手を差し伸べてくれたのが他ならぬ上条だった。 それから何かと上条のことが気になるようになった美琴は 様々な因縁をつけて上条に纏わりつくようになった。 そして一年前、『絶対能力進化』という絶望に陥った美琴を上条は再び救い出した。 その時になって美琴は初めて上条に対する気持ちを自覚し告白するに至った。 上条も初めは美琴のことを妹のようにしか思っていなかったが、 この一年を通して美琴に向ける感情が親愛から異性に対する愛情へ変わっていった。 初めて出会ってから二年の月日を経て、二人の関係は一つの節目を迎えたのだった。 美琴を寮まで送っていくと、上条はある番号に電話を掛ける。 すると男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる 『人間』の声が電話先から聞こえてきた。 『何となくだが今日は君から電話が掛かってくると思っていたよ』 「用件は分かってるよな」 『イギリス清教との関係についてだろう? 結論から言うと、イギリス清教の上の人間は 学園都市とローマ正教の戦争を通して漁夫の利を得ようとしている。 イギリス清教のトップがどういう人間かは君の方が良く理解してるだろう』 上条はかつて一人の少女に課せられていた残酷なシステムのことを思い出す。 『今の状況でどちらに付くこともあの女は良しとしていない。 危険な綱渡りをしてでも、美味しいところだけ掻っ攫おうとしているわけだ』 「どうすればイギリスにいる人間も救える?」 『君の博愛主義にも困ったものだな。 二兎追うものは一兎も得ずという言葉があるだろう? あまり色々なものに目を向けすぎると、本当に大切な者を失うことになるぞ』 「…」 『強いて言うならローマ正教との戦いに敗れぬことだ。 それが出来なければ私達の身すら危ういのだからな』 「…そうだな」 『私は君がどんな選択をしようとも味方でいるつもりだ。 だが大切な者のためにも、あまり無茶をしないことを勧めるがね』 「分かってる」 『では切るぞ。 最近は君の学習態度が芳しくないと聞いている。 街を守ってもらってる身としてはあまり大きなことは言えないが、 学問の街を治める人間として最低限の役割はこなさないといけないからな』 「分かったよ。 それじゃあまたな、ボス」 『ああ』 向こう側から電話の切れる音がした。 そして上条も眠りに就くべく布団の中に潜る。 やがて一日の疲れが上条は深い眠りへと誘うのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の執行部員
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side ―そして― あの夏の暑さも完全に抜け、冬の寒さが目立ちつつある11月の中旬。 そんな月のとある日に、様々な者達からの祝福を受けながら、二人の結婚式は挙げられた。 嘗ての上条のクラスメイトは言った。 「絶対その子を幸せにしたるんやで、カミやん」 「二人ともおめでとさんだにゃー。俺もいつか舞夏と…」 「上条、貴様もようやく身を落ち着けたのだから、むやみやたらと女にちょっかいだすなよ?」 美琴の友人は言った。 「「おめでとうございます!みさ…いや、上条美琴さん!」」 「殿方さん、お姉様を不幸にしたら、わかっていますわよね?……おめでとうですの」 イギリス清教、天草式の者達は言った。 「ふん、君が幸せになろうが不幸になろうが僕にとっては限りなくどうでもいいことだが、ただ一言、おめでとうとだけ言わせてもらうよ」 「上条当麻、あなたへの多大な恩は未だに返しきれていませんが、今はそれはいいでしょう。二人とも、おめてとうございます」 「二人とも末永くお幸せになのよな!(五和、大丈夫だ。例え正妻の座がダメでも側室の座を狙えば…)」 「(な、何を言ってるんですか建宮さんは!)あ……お、おめでとうございます…」 白髪の少年と、美琴とそっくりの者達は言った。 「めんどくせェ……大体なんで俺がこの二人をしふうなんくおめでとォ!?」 「もう!どうしてあなたは素直に祝福できないの!?ってミサカはミサカは憤慨してみたり!ごめんね、この人素直じゃないから。でもでもとにかくおめでとうって、ミサカはミサカはとっても綺麗なお姉様に抱きついてみたり!」 「お姉様もここまできましたか。となると、私達は今後彼を義兄様と呼べばいいのでしょうか?……それはともかく、おめでとうございます、とミサカは密かな疑問を胸に秘めつつ心の底から二人を祝福します」 二人の両親は言った。 「当麻、もし誰か他の女性にうっかりフラグを建ててしまっても、何も言い訳せずその子にすぐ謝らないとだめだぞ?でないとあだだだ!」 「あらあら刀夜さん、あなたは自分の息子に何を吹き込んでるのかしら、それで自分の行いが許されるとでも?……当麻さんも、あまりその子に迷惑をかけてはいけませんよ?」 「当麻君、娘を頼んだぞ?美琴も、幸せにな」 そして、白い修道服を着たシスターの少女は言った。 「短髪、とうまは確かに不幸だけど、それ以上に不幸にしたら許さないんだよ。……でも、私は心の広いシスターだから、二人のことはちゃんと祝福してあげるんだよ。……二人とも、おめでとう」 正直な話、二人にとってインデックスのこの言葉が一番胸に響いた、 彼女は上条にとってはかけがえない存在であることには変わりはなく、美琴にとっては互いにいがみ合っていた仲だったとは言え、それ故の因縁がある。 だからこそ彼女、インデックスの祝福するという言葉が、一番胸に響いた。 そして他にも、約二百人にのぼるシスター達、イギリス王室の者達など、美琴には上条が一体どこがどう間違って繋がりをもったのかわからないほど多くの人達から祝福を受けて、二人の結婚式は執り行わた。 「―――えー、続きまして、新郎新婦の親族を代表して、御坂美鈴さんからのスピーチです」 「どうも、新婦の母親の御坂美鈴です」 本来、こういったスピーチは父親がするのが常なのだが、今回は父親の辞退や美鈴からの強い希望により、美鈴となった。 美鈴はスピーチ台に立つと、何やら式場の従業員に合図を送り、 「それでは皆さん早速ですが、恐らく皆さんも私と同様、かたっくるしい挨拶やらスピーチはあまりお好きではないと思います。なので、まずこれを観て楽しんでもらいたいと思いまーす♪」 やたらとニヤニヤした表情で、どこからか現れた大型スクリーンを指差した。 『―――そういえばさ、あの星座知ってる?』 「「!!??」」 会場全体の注目を浴びている、大型スクリーンに映し出されたものの内容、それは今年の8月20日の夜にあった、上条がプロボーズに至るまでのとある出来事の様子だった。 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/side by side
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学園都市のとある学校のとあるクラス。 隣のクラスに比べ、いっつもお祭り騒ぎでうるさいクラス。 そこにいる、とある少年はとても楽しそうだった。 「えーまたおれだけ補習ですか……?」 「ほっ、補習をさぼったのは上条ちゃんなのですよー!」 不老の先生、月詠小萌。見た目に似合わず、結構長く生きてる人。 そして怒られてる少年は上条当麻。 「(だってしょうがないじゃん)」 「何か言ったのですかー?」 「い、いえ!なんでもございませんのことよ!」 実は補習があった時、いつものようにとある人と戦っていたのであるが、 それはまた別の話。 「まったく、こんなんじゃ上条ちゃんの未来は不安だとしか言いようがないのですよー」 「幸せになれれば何でもいいです……」 「なっ……」 呆れたように小萌はため息をついた。 「全く、上条ちゃんは雑草みたいなのですよー」 「え、ちょ、それひど!」 先生に言われて当麻は軽く落ち込む。 (全く、本当に……強い雑草みたいなのですよー) 小萌は軽くほほ笑む。 先生はみんなが笑っているその様子が好きだった。 そして先生の願いどおり、いつでもそのクラスには笑顔があった。 「Weed」小萌編 Fin
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とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅵ Ⅴ 幻想(ゆめ)を見る。 それは、 とても哀しい現実(ゆめ)だった。 全てが壊れて。 全てが無くなって。 全てが遠ざかって。 そして、 自分は、 その全てを起こして。 全てを失った。 何もかも。 仲間も。愛も。友情も。自分も。体も。意識も。心も。 幻想も。 力も。 そして、 世界は、 終焉を迎えた。 Ⅵ 「…はえ?」 思わず、上条は声を上げる。 目を開けると、移ったのは見慣れた天井。 そして、首を回すと。 移ったのは、見慣れた―――― ギュゴォッ! と、上条は首を瞬間的に元に戻す。 そして、冷静になってみると、その視線の先には、 歯をギラつかせたインデックスが。 「…あ、あのー?」 上条が、防御態勢をとりつつ言う。 「わ、わたくしめは、注射をうたれて寝ていたわけでして… つまり、この不可解な現象にわたくしめは関与していないわけでして… そして、あなたのお怒りも緩和されないわけでして?」 最後だけ、ちょっと理解不能な文章になった。 だが、それでも目の前のシスターは、コクンと頷く。 そして、 「と――――う―――――ま―――――ぁ!!!!」 そう叫び、インデックスが飛びかか―――― 「…?」 ろうとした時。 上条の横で、『何か』が動いた。 それは、この不幸の根源。 つまり、常盤台中学のエースで、超能力者(レベル5)の第3位で、つまり、 「…って!ちょっとあんたねぇッ!?」 御坂美琴だった。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅶ なぜか、さっきまで上条と同じベッドですやすやとかわいい寝息をたてて寝ていた少女だ。 そんな可憐な美少女に、上条は思わず言った。 「ってか!全てお前のせいだからっ!?まずこの不可解な現象がおきた理由を説ぐはぁッ!?」 発言途中でインデックスに頭を噛み付かれる上条。 「え、あ、え…?私??」 途中までの発言に、戸惑う美琴。 その仕草が、なんともいえないほどかわいい。だから言った。 「すみませんっ!?なんでもいいからこの怒りボルテージMAXのシスターさんを引き剥がしてもらえませんでしょうかマジで!!」 そう叫んだ。 だって、生命の危機が現在進行形で訪れているのだ。そんな状況下で、かわいいとか可憐だとかもう関係ないよねーッ!!と上条は勝手に決め付ける。 その叫びに美琴は、 「言われなくともッ!」 と、なぜかやる気満々な声で答え、インデックスを剥がし始める。だがしかし、インデックスのあごの力が異様に強く、引き剥がせないどころかインデックスの顎が少し動いて更なる激痛が上条の体を支配する。 「-^~っ:ぉ。・っ!?」 理解できるはずがない言語を放つ上条。 それを見た美琴は、 「え?逆効果!?」 とっさに力を抜く。だが、体にかかる力がなくなったためか、やっぱりインデックスの噛み付きレベルが一つ上がってしまう。 もはや声も出せない上条。 「ちょ、もうッ!」 そう美琴が言い、少し強めの電流をインデックスに浴びせる。インデックスが少しふらっと揺れ、噛み付きから解放された上条が叫ぶ。 「だぁ!俺は今回の戦いであんまり怪我しなくて優秀だったなぁー、なんて思ったら次はこれかよっ!? てか、俺の怪我の大半はお前のせいな気がするぞインデックス!」 「な、なにを言うのかなとうま!?そもそも、とうまが無駄な事件に首を突っ込むからいけないんだよッ!」 「の前に、あたしへの感謝の気持ちはないわけなの!?」 上条とインデックスの声量に負けじと、美琴も声のボリュームを上げる。 「あ、ありがとな」 適当に言う上条。というか、この惨事はお前のせいじゃねぇの?といいたかったところなのだが。 そして、その言葉を言った次の瞬間。 「何故お姉様が感謝の言葉をかけられ、何故私にはそれがないのですか?と、ミサカは暗に『私にも言え』と強制します」 「どういう理論だよそれ!?ってか、何もしてないのに感謝の言葉をかけられてもうれしくないだろ!」 「いいえぜんぜんっ!全く持ってうれしい限りですがっ!」 と、御坂妹に続いて病室の扉をぶち壊すような勢いで入ってくる少女。 「五和!?なんでここに?」 「説明は後回し!とりあえず今はッ!」 「なにが、とりあえず今は、よ!新参者は引っ込んでなさい!!」 「それだったら、短髪も新参者かも!」 「ふふ。あんたは知らないだろうけど、実は私たちは前から関係があったのよ」 「確かにそうだけど!事実だけど受け取れる意味がちょっとヤバい気がするのですがっ!?」 なんかヒートアップしていく彼女たちの会話に一声適当に入れ、上条はとりあえず会話から外れる。 (…さっきの夢…は?) 確か、起きる前までやけに現実的な夢を見ていた…気がする。 しかし、ぜんぜん内容が思い出せない。分かるのは、とてつもなく悪い夢。さっきみたいな展開でもいいから、何でもいいからその夢から覚めたい、と思ってしまうほどの。 確か、 自分が笑っていて、 周りの人が泣いていて、 周りの人が泣きながら俺に襲い掛かってきて、 そして自分は――――― (…だめだ。なんか思い出せねぇ) 上条は頭に手を当てかけ、その手を引っ込める。 (まぁ、思い出せない夢より) と、上条は目の前の『惨事』を見つめる。 (――――目の前の事件…か) ため息をつき、そして、 「…そういえば、何でこんなことなってんだ…?」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅷ その後の、上条とほかの面々の壮絶なる争いを書くといろんな意味で凄いことになるので、省略する。 とりあえず、今は昼。 そして、場所は、 「…俺、何でこんなとこいるんだ…?」 このごろ疑問系ばかりだな、と感じる上条。しかし、分からないものは分からないのだから仕方がない。 「私たち、天草式十字凄教以上の組織の中心人物が、なに言ってるんですか」 五和が、少しだけ呆れたような感じで言う。 「『上条勢力』ねぇ…実感が沸かない」 あの後、五和からいろいろと話を聞いた。 まず、五和がいきなり病室に殴りこんできた理由(上条を巡る、という意味ではない)。 今回の先頭のことを、学園都市はイギリス清教伝えたらしい。 すると、イギリス清教からの増援がよこされることになった。 その増援が、天草式十字凄教、元アニェーゼ部隊だそうだ。 そして、それらと今回の戦闘にかかわった面々で、作戦会議みたいなものを行うらしい。 「…へぇ」 適当に上条が相槌を打ったところで、とある男を見つけた。 確か名前は、 「…海原、光貴?」 8月31日に、美琴をデートに誘って上条を襲った人物だ。 その海原が、隣にいる神裂クラスに露出度の高い女と話している。そしてその女の隣には、一方通行(アクセラレータ)。 「…何なんだ、あいつら」 なんとも分かんない面子だ、と上条が思ったところで。 美琴がその女を思いっきり睨み付けているのを視界が捕らえた。 「…」 上条は、ぎこちなく視線をはずす。 あれはマズい。絶対マジだ。たまに見る美琴のマジの目だ。対一方通行(アクセラレータ)のときに見たあの目だ。 …この作戦会議とやらが終わるまで、あの女の人が消し炭になっていないことを上条は天に願った。 と、そこで。 『時間となりました』 いきなり、部屋一帯に声が響いた。 「…時間?」 「ええ。あれ、聞いてませんでした?」 それに上条は、無言で頷く。 てか、五和の話が本当だとしたら、一つの組織の中心人物にそんな重要なことを教えないってのはどういうことだ、と上条は思う。 そんな上条の思いを無視し、また声が響く。 『それでは、ただいまより対反乱因子作戦会議を行います』 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅸ 「反乱因子?」 上条が、そのワードに反応を表す。 『垣根聖督の戦力の超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)、および聖督本人を指します』 「ふーん…」 適当に受け流した上条、 だったのだが。 「…ハァッ!?」 大部分の科学サイドの面々が声を上げる。 「…?どうしたのよ?」 天草式教皇代理である、クワガタのような髪形をした建宮斎字が問う。 「ちょ、え!?もう一回、今の部分!!」 美琴が、かなりおかしい日本語で叫ぶ。 しかし、機械の方はそれで通じたようだ。 機械は、やはりまるで感情のない声で言う。 『垣根聖督の戦力の超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)、および聖督本人を指します』 もう一度、丸々同じことを発言した。 それに科学サイド側は、 「…レ、ベル…6?」 海原、一方通行(アクセラレータ)と話していた、裸の上半身に淡い色の布、制服であろうブレザーを着込んでミニスカート、というある種神裂クラスの女が言った。 「…絶対、能力者…」 その言葉に、一方通行(アクセラレータ)さえも驚きの表情を隠しきれていない。 「その情報は、確かなものなのでしょうか?と、ミサカは機械相手に質問を投げかけます」 妹達(シスターズ)を代表している、御坂妹が問いかける。 『この情報が正確なものである確率は、かなり高いとされます。前回の戦闘において、大能力者(レベル4)の空間移動者(テレポーター)、白井黒子が倒した超能力者(レベル5)の話だと、垣根聖督は絶対能力者(レベル6)を所持しているそうです。数は未明』 淡々とした声で言う機械。 「…神ならぬ身にて天上の意思にたどり着くもの」 打ち止め(ラストオーダー)が、機械のような合成音ではなく、人間らしい高低がある声で言った。 「何で、そんなことがわかるのかしら?相手には、精神系能力者もいるのよ。もしかしたら、あの子の頭にそんな事を無理矢理インプットさせただけかもしれないじゃない」 「それはありえないわね」 美琴が、ほんの少しの可能性を提示したところで、突然女の声にさえぎられる。 ほとんどの人間の視線が、会議室につながる扉に向かう。 その扉を開け放ち、中に入ってきたのは、 「ッ!心理掌握(メンタルアウト)!?」 「あら。そんな能力で呼ぶのではなく、ちゃんと名前で呼んで欲しいものね。超電磁砲(レールガン)」 常盤台中学の制服を着た、縦長の黒髪ストレート、楚々とした表情を浮かべる少女が言った。 「まさか、あんた勝手に黒子の記憶を――――」 「勝手とは人聞きの悪い。私は、学園都市上層部の方に協力したまでよ」 美琴を見下すように、心理掌握(メンタルアウト)、と呼ばれた彼女は視線を下げる。 「…なぁ。心理掌握(メンタルアウト)、って何だよ?」 上条が、小さな声で御坂妹に問う。 だが、それは本人に聞こえたらしい。 「!?あ、あなた、この『心理掌握(メンタルアウト)』こと長谷田鏡子を知らないと!?それでも学園都市に在住する生徒かしらッ!?」 凄い勢いで、鏡子とやらにまくし立てられた。 「…いや…知らないものは知らないけど」 引き気味に上条は言う。というか、常盤台の制服を着ている時点で、自分の方が立場上なんじゃね? 能力云々の前に人間として俺のほうが上じゃね?と上条は思うのだが、 「…超能力者(レベル5)第5位を、あんたは知らないの…?」 美琴に呆れた声で言われて、初めて上条は驚きの声を上げた。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ 「…呆れた」 そう、鏡子が言う。 (いやってかっ!あれ、お嬢様ってみんなこんな口調なの?俺の知ってるお嬢様っていったら、美琴に白井、それにこの人しかいないんだけど…白井は口調は丁寧だけど、性格があれだし…あれ?マジでお嬢様ってこんなモン??) と上条が、あまりのショックにどうでもいいことを考え始める。 「…あんたね。そんなことにショック受けんなら、あんたがあいつを倒したときのショックはどれくらいのモンなのよ?」 美琴が、一方通行(アクセラレータ)の方を首で指しながら言う。 「そういえば…ぶっちゃけ、超能力者(レベル5)っつわれてもな…」 と、いきなり平静を装う上条。 それに鏡子は、 「はぁ!?何ですのその反応は!…って、え…?まさか、あ、なたが、一方通行(アクセラレータ)を …倒した、お方…?」 発言の途中あたりから、疑問文になった言葉。 それに上条は、 「あ、一方通行(アクセラレータ)。お前、倒された経験って俺にだけ?」 「ぶっ殺すぞ」 いきなり話を振られた一方通行(アクセラレータ)だが、もういつもどおりに戻っている。 「…まぁ、お前にだけ、って言えばそうなるか」 一方通行(アクセラレータ)が思案気な顔になり、言った。 「…?」 その、そういえば2,3回倒されたっけ?のような発言に首をかしげる上条。 一方通行(アクセラレータ)の能力は絶大だ。それこそ、上条のようなレイギュラーな能力を持ってても勝てるかどうか怪しい程度。正直、あのときの勝利は―――― 「あ、あなたがあの『上条当麻』様ですかッ!!??」 「はいぅ!?」 思考の途中で、いきなり大声を出されてビクる上条。 発言の主である鏡子の方を振り返ると、 上条の不幸センサーがビビッと警戒態勢を知らせる警報を鳴らした。 つまり、 「あ…ッ!い、今までの無礼な言葉遣い、まことに申し訳ございませんっ!わ、わたくしとしたことが…」 なぜか一瞬で顔を赤らめ、上条に対して考えられない口調になった鏡子が写った。 それが意味することとは、 「インデックス!?私はこの件に関しては本当に関与――――?」 いつものようにインデックスが噛み付いてきて、美琴がビリビリを飛ばしてきて…という日常(不幸)を予想して右手を突き出し、左手で頭を庇う、という体制を一瞬で完成させた上条が、いつになく無反応な彼女たちに対して不信感をあらわにする。 「んー。これくらいなら、別に何の問題もないんだよ」 「てか、これくらいで問題になるんだったら、とっくに誰かとデキチャッてるわよ」 「…?」 上条をめぐる乙女関係を代表して二人の美少女が答える。そして、その乙女関係に混ざっている少女たちは、うんうんと頷いている。 一文目の前半部分については、上条には全く自覚がないのだが。 「な、なにをっ!?このわたくしを見てそんな発言が!?」 と、鏡子が二人の発言を受けて胸を張る。 上条が改めて鏡子をしげしげと眺めてみると、 足は結構美脚。スタイルもかなりのもの。顔は、まあまあ整っている。 普通にモテるくらいかなー、と適当に上条は予想する。 「どっ、どうですか上条様ッ!?」 そんな上条の反応を見て、鏡子がいきなり接近してくる。 「いや…どう、と言われても…」 苦笑い、愛想笑いが混じった笑みを浮かべ、鏡子から顔を背ける上条。 「ほら。あんたには到底手の届かない男なのよ、そいつは」 「でも本人には自覚がないんだけどね。…自覚があったらあったでそれは怖いんだよ」 予想してましたー、と二人の少女が言う。 「な、何故っ!?何故わたくしの百戦錬磨の恋愛テクが通用しないんですのッ!?」 「百戦錬磨ぁ?そんなんじゃ通用しないわよ」 美琴が、かわいそうなものを見るような目で鏡子を眺める。 … 「あ、あのー?これは、いったい何の…?」 と、今までの不可思議現象(ドッキリ)を見てきた上条が言う。 「ほーら。自覚がないんですよ」 今度は、隣に座っている五和が苦笑混じりに言った。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅰ 「だ、だから何の話を…」 五和に言葉を返しながらも、『ドッキリ大成功!』と赤字で書かれているであろうプレートを探す上条。 「…な、ならばわたくしの能力でッ!」 「はいはいー。当麻、ずっと頭に右手当ててなさい」 どうでもいい、とでも言いたげにざっくばらんに言葉を放つ美琴。 「え?あ、はい??」 いまいち理解しがたいが、とりあえずそれにしたがってみる上条。 「何を?そんな手など、わたくしの能力の前には壁にもなりませんのよ」 フン、と鼻で笑う鏡子。 「どうかしらね?こいつが、どうやって学園都市最強を倒したと思う?」 鏡子の行動を受け、嘲笑するような表情になる美琴。 「いや、あの。俺、さっきからずっと疎外感を感じちゃってるのですが」 上条が、不安げに美琴に説明を求める。 だが、その説明が来る前に。 バギン! 上条の頭の辺りから、幻想殺し(イマジンブレイカー)が反応したときになる音がした。 「え?」 それに真っ先に声を上げたのは、鏡子だった。上条には、その音を聞いた瞬間、全てが理解できたからだ。 「何ですか、その音は…まぁ、とりあえず演算は完璧ですから、もう上条様はわたくしのものですがっッ!」 そういい、高笑いする鏡子。 「あー、ちょっとそこそこ」 やはり、かわいそうなものを見るような目で鏡子を見ていた美琴が言う。 「何ですか?今更になって帰してくれ、なんて聞きつけませんのよ。その前に、別にそういう関係であった経歴は無さそうですがね!」 同じく高笑いする鏡子。 それに、もはや何もいえなくなった美琴が、 「…あんたの口から言ってやりなさい」 上条を、どうしようもない表情で見ていった。 「あの…何が起こったのかは理解できてんだけど、何で起こったのか理解できないんだけど?」 「それはそれで逆に良いんです、と、ミサカは唐突に会話に混ざり言います」 上条の発言に即答する、御坂妹。 「…とりあえず、こっちか」 なんか、ものすごく重大なことを見落としているような気もするが、とりあえず鏡子の方に向き直る。 「あ、あのー…お取り込み中申し訳ございませんが」 もはや高笑いから、黒子の本質を表したときのような表情になっていた鏡子の前に立ち、言う。 「多分、その『心理掌握(メンタルアウト)』っていうの、効いてないよ」 その上条の発言を聞いた瞬間、鏡子は、 「ッ!?な、何故!?制御下にある上条様から、何故そんな言葉がッ!?」 なんか、急に取り乱す鏡子。 「あー、俺の右手。幻想殺し(イマジンブレイカー)ってんだけど、これが触れた全ての『異能の力』は問答無用で消去されるから」 「…」 その言葉に、反応できない鏡子。 学園都市最強を倒した男。 そんな人間から放たれる言葉には、信憑性があった。だから鏡子は黙ったのだ。 「…いろんな意味で、あんたには無理よ?」 美琴が、鏡子に止めを刺すように言う。 それに鏡子は、 「…ってか、何やってんだよ?」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅱ 「んあ?」 と、上条は予想していなかった声に振り向く。 (…待てよ。またさっきの展開とおんなじ、なんてことはない…よな?普通に男っぽかったし… ッ!?ま、まずい…白井のことを思い出してしまった…) 美琴の苦悩を、本格的に理解できるんじゃないか、と感じる上条。 だがしかし、現実は別にそう危惧すべきことは起こっていなかった。 つまり、 「へぇ。あんたが『一方通行(アクセラレータ)』を潰した男、ってか?」 「いやっ!今度はそっち!?学園都市最強を倒した男を倒せば俺が学園都市最強だぁぁぁぁぁっ!!! って思考の持ち主さんですかッ!!?」 そういうことである。 …実際問題、そんなことにはなっていないのだが、上条の脳はすでにショートしている。 「…?学園都市最強を倒したところで、じゃあそいつが最強ね、なんていくはずねぇだろ」 あっさりかえされる上条。 それに、え?てことは、なんかいきなりバトろうぜ!な展開は無しッ!?と、あらぬことを想像していた上条の表情が瞬間的に明るくなる。 「…チッ」 だが、とある白髪の最強少年のあからさまな舌打ちにより、上条の笑顔は凍りつく。 「おおー、いるとは聞いていたけど…なんかこれは面倒くさい気がするぞ?」 と、一方通行(アクセラレータ)を見つけた少年が苦笑いとともに言う。 「…長点上機学園2年、葛城妖夜」 「おお、学園都市最強に覚えられてるとは。なんか光栄だなあ」 妖夜、とか言われた少年は、一方通行(アクセラレータ)に笑みを返す。 「馬鹿が。知らない方がおかしいだろォが」 「まぁ、そういうことだな」 「…はい?」 と、二人の会話に何か不穏なものを感じてしまう上条。 「超能力者(レベル5)、『肉体変化(メタモルフォーゼ)』さンよォ」 「はいでましたよなんかよく分からんフラグッ!?俺はそんなもの全然希望してないんだけどッ!!」 「…?何言ってんだ…??」 妖夜なる者が、不思議そうに聞き返す。 「…なんというか…とりあえず」 上条が、息を吸い込み、 「不幸なんですわたし」 「どこら辺が不幸なんですか…?」 隣の五和が、なぜか頭を抱えてため息をつく。 「もはや口癖なっているそうですが…一般人から見ればよほどの幸運なのでは?」 ものすごい幸運を持って生まれた、『聖人』たる神裂が言う。 「…どこをどう見れば?」 「どんな角度から見ても、よ」 美琴が、やはり少し疲れたような表情で言ってくる。 「いやあのですね。わたくしは1週間に100回くらい殺されかけた経験があるきがするのですが」 上条が言っているのは、英国での騒乱、それに続いた対フィアンマ戦のことだ。 それに、インデックスがつっつきを入れた。 「それはただ単にとうまがでしゃばるからなんだよ」 「でしゃばらなければならない理由の大半のあなたが言うことじゃありませんよインデックスさん」 冷静なコメントを返す上条。 「…それにしても、本当に『不幸だ』と感じてらっしゃるのですか?」 部屋の隅っこでなんか錯乱しかけていた鏡子が、平静を取り戻しつつ言う。 「…えと、あの。全員そろって俺の不幸全否定ですか?」 上条が、不幸の原因であるらしい右手を見つつ、言う。 「さっきから話が全然掴めねぇんだけど…とりあえず、『こっち』の方を進めようぜ?」 妖夜が、自分の後ろを振り返りながら言う。 「…まだ、なんかあんのか…?」 上条が、やはり自分は不幸だ、と再確認しながら言った。 「ん?話は終わったのか?俺は他人の色恋沙汰とかに首を突っ込むほど曲がってないぞ」 唐突に、芯が通っているような声が響く。 「超能力者(レベル5)、『念動砲弾(アタッククラッシュ)』こと削板軍覇だ」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅲ 「…」 それに、上条は、 「御坂を皮切りに…なんでこう次々と超能力者(レベル5)とあってしまうんだ俺…まさか、全員妹達(シスターズ)関連なのかおいッ!?」 もうあまりの自分の不幸さに、勝手に人にその不幸の原因を作ってしまう。 「ちょ、なにそれ!?確かに、わたし、一方通行(アクセラレータ)はそうだけど!ほかは関係ないじゃないッ!!」 それに、もちろん美琴は反論する。 しかし、妹達(シスターズ)ではなく美琴関連なら、一方通行(アクセラレータ)はさながら、心理掌握(メンタルアウト)とはかなりの関係を持ち、肉体変化(メタモルフォーゼ)とは大覇星祭のとき一戦交え、念動砲弾(アタッククラッシュ)は美琴の知らないところで妹達(シスターズ)とほんの少し関わりを持っている。 つまり、今この場に集っている超能力者(レベル5)は全て美琴に関わっている、と言える。 別にここがそれを認識しているわけではないのだが、この場にいる美琴を除いた超能力者(レベル5)+上条が、 「…ハァ」 「なっ…何よそのため息!?」 美琴がやはり突っかかってくる。 が、そこで、 「とりあえず、話を進めてもよろしいでしょうか」 突然、声が響く。 「戦闘可能な超能力者(レベル5)が集い、紹介も済みましたので」 「そういえば…これって、作戦会議、なんだったっけ?」 上条が、機械の声に反応して言う。 「はい。まだそろっていないメンバーもいますが、時間がかかるとのことですので」 そこで機械は、一度音を切って少し間を置く。 「それでは、会議を進めてもよろしいでしょうか?」 機械が問いかけるが、返事をするものなど一人もいない…わけではなく、打ち止め(ラストオーダー)が『オーケーだよー』とか意味が分からないはずなのに言っていた。 機械は打ち止め(ラストオーダー)の声を無視して言う。 「それでは、改めて…ただ今より、対反乱因子作戦会議を始めさせてもらいます」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅳ 「ではまず、事の発端、および昨日の戦闘について説明させてもらいます」 機械が、無駄に丁寧な言葉でみなに伝える。 「今回の事件――――今後、反乱事件、と呼ばせてもらいます――――の発端者は、垣根聖督。垣根聖督は、学園都市第2位、垣根帝督…『未現物質(ダークマター)』の父親です。垣根帝督は、『ピンセット』を得るために起こした事件で、学園都市第1位、『一方通行(アクセラレータ)』と遭遇、戦闘を行いました。結果、垣根帝督は敗北。さらに、一方通行(アクセラレータ)による過度な攻撃により、死亡寸前まで追い詰められます。しかし、学園都市統括理事長の指示により、その後脳や心臓、肉片などを回収され、今は3つの容器にそれぞれが収められており、『生存』しています」 会話の途中から出てきた一方通行(アクセラレータ)は、特に表情を変えることなく聞いている。 隣にいる海原…ではなく、アステカの魔術師、だと思われる男や、露出度の高い女子高生などは少し表情を変化させているが、上条には理由が分からない。 「垣根聖督は、どうにかしてその情報を得たらしいのです。そして、ただ単に『生存』しているだけの息子を、元の生活に戻すために今回の『反乱事件』を起こしました」 機械は、「…だと思う」、「…だそうだ」などといった不確定な表現はしなかった。決定事項をただ冷静に報告しているのだ。 「今回の『反乱事件』の目的は、先程述べたとおり、垣根帝督を元に戻すこと。しかし、今の垣根帝督は、学園都市が作った並の核シェルターとは比べ物にならない場所で『生存』しています。そこを突破するためには、相当の戦闘力が必要とされます。ここを単純に『突破』するだけなら、超能力者(レベル5)が一人いれば十分ですが…学園都市は、それを良しとしない。そんな事をすれば自分を潰しにかかるだろう――――そう考えた垣根聖督は、『反乱因子』の作成に取り掛かったのです」 一気に言っていく機械。 「反乱因子、とは?」 そこで、神裂が疑問を口にする。 「まことに申し訳ございませんが、質問はわたしの説明の後、受け付けます。それまでは、お静かに聴いていてください」 やはり無駄に丁寧な言葉で、神裂の質問を跳ね除ける機械。 「では、話を続けさせてもらいます。 先程述べた『反乱因子』は、中途半端な力では学園都市と対立することは出来ません。そして、垣根聖督は垣根帝督の父親であるとともに、学園都市に在住する科学者でもあります」 「へぇ。そりゃァ、結構なレアじゃねェのか?」 一方通行(アクセラレータ)が口を挟んだが、誰にも反応されなかった。 「彼が担当する専攻は、『AIM拡散力場』。もちろん、息子の『未現物質(ダークマター)』のAIM拡散力場も研究対象でした。垣根聖督は、息子の能力だけでなく、様々な能力のAIM拡散力場も研究していました。彼はその研究成果をもとに、人工的に能力者を作り上げていました。これは反乱事件の前からのことです」 「能力者を…人工的に作成、ですって…!?」 美琴が、異様に反応する。似たような遭遇にある彼女だからだろうが、当の『妹達(シスターズ)』は特に反応していなかった。 「反乱事件前に作り上げた能力者は、合計47名。作り上げたものの、無能力者(レベル0)だった者は89名。能力者のうち、低能力者(レベル1)認定者は13名。異能力者(レベル2)判定は18名。9人は強能力者(レベル3)。大能力者(レベル4)は7人作り上げていました。超能力者(レベル5)、絶対能力者(レベル6)はともに0です。しかし、垣根帝督の敗北に伴い、垣根聖督に一度送られた垣根帝督から、本人のAIM拡散力場を研究に取り入れた垣根聖督は、その研究レベルを格段に増すことに成功。 その後に作られた能力者のレベルも跳ね上がり、強能力者(レベル3)が13人、大能力者(レベル4)が23人、超能力者(レベル5)が8人です」 「…超能力者(レベル5)を、8人も、ねぇ…」 あまり実感が沸かない上条は、とりあえず『凄いな』と思った。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅴ 「はぁっ!!?」 なので上条は、突然響いた大声…いや、もはや叫びに相当驚いた。 その叫びは、高位能力者たちから発せられたものだった。 「って!何をそんなに驚いてんだよ!?」 妙な叫びのせいで、自然と声のトーンが高くなっている上条。 しかし、彼らはそんな上条お構い無しに勝手に話を進めていく。 「そういやァ…どうやって超能力者(レベル5)を8人も用意したのかは気になっていたが…」 一方通行(アクセラレータ)が、机からずり落ちた腕を直し、再び頬杖をつきながら言う。 「まさか…『造る』、なんて方法で用意したなんて…」 美琴は、もはや表情を浮かべていない。彼女の無表情なんて見たことの無かった上条は、少し引いてしまう。 「実際、どのようにして造ったのか、が問題ではなくて?」 割と平静を保っている鏡子が言う。実際は、上条に自分の能力――――心理掌握(メンタルアウト)と、自称百戦錬磨の恋愛テク――――が聞かなかったときのショックが大きすぎたせいで、ショックが緩和されているだけである。 「学園都市第2位のAIM拡散力場…例えそんなものを用いたとしても、超能力者(レベル5)はおろか、大能力者(レベル4)も造り上げることは出来ないと思うが…」 妖夜が、パニックしかけた脳を落ち着かせつつ言った。 「そこら辺は、科学者さんたちにしか理解できない方程式でもあんだろう?」 思いっきり驚いた表情のままなのに、冷静な言葉を投げかける軍覇。結構シュールに見える。 「それでも…超能力者(レベル5)は造れないんじゃ…」 一方通行(アクセラレータ)の隣に座っている、ブレザーな女子高生が無理に冷静を保ちながら言う。 しかし、その声の後に続くように、誰となく言った。 「…超能力者(レベル5)を、人工的に『造った』なら…絶対能力者(レベル6)は…?」 それは、不安を言葉にしているようにも聞こえた。 その言葉を無視し、機械は話を続け始める。 「さらに、垣根聖督は絶対能力者(レベル6)を所持している模様」 「…チッ。予想はしていたが…」 一方通行(アクセラレータ)が、唐突に首筋の電極のスイッチを入れ、言う。 回りの者は当然警戒態勢を一斉に敷くのだが、一方通行(アクセラレータ)はそんなものにかまわずに目を閉じ、何かブツブツ呟いている。 「何かの演算をしているみたいだね、ってミサカはミサカはミサカネットワークが稼動したのを感知したのを感じながら言ってみる」 と、御坂妹の隣に居る打ち止め(ラストオーダー)が、机から身を乗り出しながら言った。彼女は、あまりショックを受けていないようだ。 「…しかし、超能力者(レベル5)8人、絶対能力者(レベル6)も何人か所持、ねぇ…」 美琴が、半分ため息をつきながら言う。 「戦闘力にすれば、超能力者(レベル5)だけでも軍隊8つ分。さらに応用性、コンビネーションなども含むとするならば、少なくとも軍隊12隊分を同時に相手できると考えても良いかと、ミサカはネットワークを介しながら言います」 御坂妹が、打ち止め(ラストオーダー)を椅子に座らせながら、前を見ずに独り言のように言った。 「それに加え、『絶対能力者(レベル6)』…」 妹達(シスターズ)を何か幻想でも見ているような目で見つめている鏡子が、気を取り直しつつ言った。 「未知数の戦力…少なくとも、軍隊3つ分くらいなら無傷で潰せるんじゃねぇのか?」 妖夜が、もはや少し笑いながら言う。おそらく真剣なのだろうが… 「軍隊3つを無傷、でか…根性のかけらも見えんな」 軍覇が、表情を戻しながら言った。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅵ 実はこの軍覇、オッレルスに敗れて以来、訓練を死ぬほど積んできていた。その訓練の成果、口調や性格も少し変わっていたのだが…やはり根っこは変わっていないらしい。 「話を続けさせてもらいます」 機械が、話に割り込んでいった。 「絶対能力者(レベル6)の戦闘能力ですが…やはり不明。ですが、単独で軍隊を5つ程度なら捨て身で潰せる、くらいの者、と予想できます」 やはり、機械は冷静な音声で喋っている。 「…ハッ。ふざけやがって」 上条が、半ば呆れ気味に言った。 「ンでェ?俺らは、そンなモンと楽しく殺し合ッてりゃいいのかァ?」 一方通行(アクセラレータ)が、少し楽しげな表情を浮かべながら言う。 「まことに申し訳ございませんが――――」 「チッ。それならいい。さっさと進めやがれ」 一方通行(アクセラレータ)が、機械の受け答えを予想したのか、忌々しそうにつぶやく。 「垣根聖督は、これほどの戦力を持っても強行突破をしようとしませんでした。まだ、学園都市には届かない…そう判断したのでしょう。そして、その学園都市を出し抜くために、まずは斥候として超能力者(レベル5)をよこした――――昨日の戦闘は、つまりは情報採取のためのものです」 「超能力者(レベル5)を斥候扱い…良い身分ですこと」 もう殆ど興味無さそうにしている鏡子。まぁ、そうなっても仕方がないといえる。 「ってことは、昨日のはお膳立て…ってことかい?」 それまで、全くの発言をしていなかったステイルが、唐突に発言する。 「はい。そうなります」 珍しく、機械が質問に答えた。そのときに説明していて、簡潔に答えられる質問だったからだろうか…? 「どんだけ、だよ…」 ステイルとは、おそらく違う意味で発言していなかった浜面が、ポツリとつぶやいた。なぜかその声は、浜面自身は部屋の墨にいるのに部屋全体に響き渡る。 「続けます」 機械的な音が、浜面の言葉をかき消す。 「昨日の戦闘で、おそらく戦闘不能に陥った超能力者(レベル5)は4人。ほかの超能力者(レベル5)は無傷です。その無傷の超能力者(レベル5)のうち、一人は精神系能力者であることが判明。能力名は、『精神操作(メンタルコントロール)』…対象を取った人物の精神を、ほとんど自在に操作できる能力、と言っていましたが、真実かは不明。その能力は、『一方通行(アクセラレータ)』の能力である程度『反射』できるものであることが判明しています。その他の超能力者(レベル5)の能力などに関しては、全く未判明です」 「待て」 そこで、一方通行(アクセラレータ)がストップをかける。 「あの女の能力…精神操作(メンタルコントロール)は、一度本人の精神に干渉し、そこから干渉できる精神を拡大させていき、さらに拡大した行動範囲内にて、相手の精神を自在に操る…ざっとこンな能力だ」 一方通行(アクセラレータ)が、一気にまくし立てるようにいった。 「根拠はおありでしょうか?」 機械が、単なる質問時とは異なる応えを示す。 「こっちは学園都市第1位の能力者だぞ。しかも、そいつの能力を一度喰らってンだ。これを信じねェってのほうが、おかしいンじゃねェか?」 一方通行(アクセラレータ)が、ふんと鼻をならして言った。 機械は数秒黙り込み、そして、 「信憑性は90%を越すものと判断。よって、一方通行(アクセラレータ)の意見を正式なものとして取り入れます」 機械が言った。 そのまま、機械は続ける。 「話を戻します。超能力者(レベル5)の戦闘能力などについては、先程述べたとおりです。絶対能力者(レベル6)については、全く予想できません。その能力は、今まで発祥し得なかった能力である、ということは予想できます」 「発祥し得なかった能力、か…」 上条は、自分の右手を見る。 おそらく、そんな能力でもあっさりと打ち消してしまうであろう、自分の力を。 「垣根聖督自身は、単なる人間です。能力者でもありません。よって、垣根聖督本人は戦力のうちに計算されておりません。結果として、『反乱因子』の戦闘能力は、最低で小国一国をつぶせる程度のものであり、最高でローマ正教の3分の2を潰せるもの、と判断されます」 「…ローマ正教…」 神裂が、一人つぶやく。 「3分の2をつぶせる1部隊、ね…」 ステイルが、煙草の煙とともに吐息を漏らす。 「では次に、昨日の戦闘について、ご本人たちから説明をもらいます」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅶ 「はい?」 予想できなかった機械の言葉に、思わずそんな言葉を漏らす上条。 「われわれは今回、『反乱因子』を破らなければ学園都市が多大な被害を受ける、と予想しました。よって今回『反乱因子』と戦闘を行ってもらうことになったのは、『上条勢力』の主要人物と、科学サイドの主要能力者たち、ということに決定されました。なので、互いに戦闘を振り返ることにより、今後の戦闘を有利に進めることができるものと思われますので、一つ一つの戦闘を振り返らせてもらいます。その中でも、今までなしえなかった技などを繰り出した人物もいますので、その点についてご本人から説明をもらいたいのですが、よろしいでしょうか?」 前半が説明、後半が頼みになっている機械の言葉。 それに、 「決定しました、だァ?」 一方通行(アクセラレータ)が、思いっきり不満の表情を浮かべて言う。 「何勝手に決めてんだクソ野郎ども。俺のことは俺が決めさせてもらうぞ」 「わたしもね。学園都市がどうなろうと知ったこっちゃないわよ」 隣の女も、薄ら笑いを浮かべながら言った。 ほかの面々も、大体同じ感想らしい。 しかし、機械はその反論を、たった一言で打ちのめした。 「あなたたちが、学園都市自体を敵に回してでも今回の戦闘に協力しない、というならば…こちらも策を練らせてもらいますが」 「…」 一同が、いっせいに黙り込む。 「協力してもらえるでしょうか?」 機械が、やはり単調な音で言った。しかし、その音にはなぜか有無を言わせない強さがあった。 そして、やはり誰も何も言えなかった。 「協力してもらえる、と受け取ってもよろしいでしょうか?」 機械が、確認を取る。 「…俺は、別になんだって良いけどな」 上条が、無神経そうに言った。 「はン。このごろ鈍ってきたからなァ、能力の方は。…勝手にしやがれ」 一方通行(アクセラレータ)は、適当な調子で言う。 ほかの面々も、さっきと同じく同じ意見らしい。 「ご協力、感謝いたします」 全く変わらず、無感情な声で言う機械。 「では、まずは――――」 と、いうことで。 大体の戦闘は、おおよそ理解できるものだからほとんどはスルーしてきた『仲間』たち。 と、そこで、 「…ん?おいステイル、これなんだ?」 上条が、超能力者(レベル5)の発火能力者(パイロキネシスト)と戦っているステイルを見て言う。 「?…ああ、このときか」 このとき、というのはステイルの身体能力が異様に上がっていたときである(2章 Ⅱ×Ⅹ Ⅶ時)。 そのときの映像を見たステイルは、 「あれは簡単なものだよ。自分の足の裏あたりに小さな炎剣を作り出し、即座に爆破させる。その爆風をうまく足の裏に集中させれば、一気に加速が出来る、ってわけさ。まぁ、扱いが難しいから普段はあんまり使わなかったものだけど」 面倒くさそうに言うステイル。 普段はあまり使わない――――その発言から見るに、その発火能力者(パイロキネシスト)はその技を使うに値する者だったのだろう。 「そんなことが出来たんですか」 感心したように言う神裂。 「…どうやっても、聖人様の身体能力には全く及ばないけどね」 苦笑いしながら言うステイル。 その後も戦闘の様子を見ていたわけだが、取立て不思議なところはなかったようだ。 あるとすれば、 「全然、浜面と滝壺が移ってないんだけど」 「ぐッ!?こ、こっちもこっちで忙しかったんだッ!」 全力で言い訳する浜面。 「忙しかったって…まさか…」 「ぜってー違う!上条、今お前が考えてるようなことはぜってーしてねぇと思うぞっ!したかったけどな!!」 上条のいかがわしそうな表情を見た浜面が、否定&肯定、という究極の答えを導き出す。 「あー、そういえば」 またぎゃあぎゃあ騒いでいる浜面を無視し、美琴が言う。 「戦闘…じゃないと思うんだけど、私たちの身体が浮いた『あれ』はなんだったわけよ?」 「…あ、そんなのもあったなぁ?」 上条が、今ようやく思い出した、という顔になる。 「身体が浮いた…?」 不思議そうな顔をする建宮。 「あー、そりゃ多分俺だ」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 3章 Ⅹ-Ⅷ 適当に言う一方通行(アクセラレータ)。 「…で?その理由と、方法は?」 美琴が、一方通行(アクセラレータ)をにらみつけながら言った。 「理由は言うまでもねェだろ。超電磁砲(レールガン)の方は、今後戦力になりそうだったからなァ。それに、俺自身の強化にもつながりそうだったから、生かしておいた。上条の方は…」 そこまで言った一方通行(アクセラレータ)が、極悪な笑みを浮かべて、 「…こいつを殺すのは、俺だけの特権だ」 「やめましょうよ一方通行(アクセラレータ)さんっ!いい加減、倒される→怒り→戦闘、の無限ループから脱しませんか!?」 「ンじゃァ、さっさと俺に殺されろ」 「んな要求のめるかぁぁ!!」 当然の反論をする上条。 だが、一方通行(アクセラレータ)は気にも留めていないらしく、 「そういうことだ。こいつらに火の粉が降りかかったら、結果として俺のマイナスにつながる可能性があった。だからわざわざ炎から遠ざけてやったンだよ。なンか文句あっか」 そういい、無関心そうに目をそむける一方通行(アクセラレータ)。 そこに、また美琴が質問する。 「動機は分かった。方法はどうやったのよ」 「…チッ。めんどっちィな…あの時、助けるんじゃなかったか…?」 一方通行(アクセラレータ)は、真剣に考え込む前に、美琴が自分をにらんでいることに気づいたようで、ため息をついてから話し始める。 「空気のベクトルを操作した」 「具体的に言いなさい」 簡潔に説明しようとしたのか、それしか言わなかった一方通行(アクセラレータ)にやはり噛み付く美琴。 「…ベクトル操作した空気を、テメェらのところまで送っただけだ。その空気は俺の干渉を受けてるから、自在に操れた。こいつの右手に触れないようにするまで、繊細にな」 そこまで言うと、もう文句はねェだろ、と小さく言い、腕を組んで目を閉じる一方通行(アクセラレータ)。 美琴の方もそれで納得したのか、何も言わなかった。 「…あのー。じゃあ、『あの声』もお前のものでいいのか?」 と、そこに上条がさらに追撃をかける。 「…」 心底忌々しそうな目を上条に向ける一方通行(アクセラレータ)だったが、 「そうだ」 その一言だけ言い、また同じように目を閉じてしまった。 「では、戦闘報告についてはこれでよろしいでしょうか?」 なんか機械が勝手に、『戦闘報告』なんて物騒な呼び方をしている。実際そうなのだろうが。 無言の会議室の中、機械は次の音声を発する。 「それでは、次は今後戦闘に協力してもらう方々の紹介に移らせてもらいます」
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とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅳ Ⅲ 「だから、いい加減離してって!私は10万3000冊の魔道書の原典をまるまる記憶している禁書目録だよ!?戦力になれないとでも思うの!?」 「はい、とミサカは少しあきれながらもそっけなく即答します」 御坂妹の腕の中でぎゃーわーぎゃーわーわめくインデックスを相手するのに、いい加減疲れてきた御坂妹が言う。 「あなた自身は魔力を持っていないはずです、とミサカは当然の事実を確認します」 「ぐぅっ…」 「もし持っているのなら、その10万3000冊とやらを使ってとっくに私の腕から逃げることが十分可能ですからね、とミサカは少し見下した感じの口調で発言します」 「…うう」 「結果を言うと、あなたは私の腕の中でじっとしていればいいのです、とミサカは事実を突きつけます」 「…」 もはや何も言わなくなったインデックス。 「…」 沈黙が流れる。御坂妹の少し荒い息遣いと、軽いイメージを受けるタタタッ、という音だけが聞こえる。 が、唐突に。 「!?」 インデックスの体が、ビクン!と震えた。 「?どうしましたか、とみ―――」 「止まって!」 御坂妹の声は、緊張したインデックスの声によりかき消される。 「前から、魔力が感じられる!しかも、結構でか…い…?って、え…この魔力…?」 途中からインデックスの言葉が、疑問形に変わる。 「この魔力…もしかして」 「あなたはいったい、何が言いたいのですか、とミサカは不機嫌になりながらも質問します」 と、インデックスの止まれ、という言葉をまるっきり無視して走り続ける御坂妹が言う。 「…あ、やっぱり止まって」 少し考え込むような表情を見せたインデックスが、緊張の糸を紐解きながら言う。 「多分、あの魔術師たちは仲間だよ」 「・・・ミサカは、いまだ魔術、などと言う言葉は認められない、と感じているのですが、とミサカは――――――」 「…ですから、あれは魔力を感知させないための魔術であって――――」 「そんな高等魔術を、複数同時に扱える魔術師がいるのかな?まぁ、『あの子』が人並みに魔力を持てば可能―――っと?」 御坂妹の言葉をさえぎった何者かが、こちらに気づいたように焦点をあわせてくる。 「!?インデ、ックス…?」 長い髪をポニーテールにし、ジーンズの片方を太股の根元辺りからばっさりと切って、なにより腰のベルトにむやみに長い―――見るからに2mはあると思われる―――日本刀をさしている、というパッと見いろんな意味で警察行きになりそうな女性が驚きの声をあらわす。 「…あれは、確かフィアンマ戦のときにいた…」 2mを越す長身の男が言う。その男は、髪は真っ赤、口には煙草、耳にはピアス、右目の下にはバーコードマークの刺青、両手の指10本には銀色の指輪、といういかにも神父から離れた格好をしている。だが、彼はれっきとした神父だ。さらに、ルーンを若干14歳で極めた天才魔術師でもある。 彼らは目を合わせ、そして、 「 」 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅴ Ⅳ 「おっ…おまえなぁぁぁぁっ!!」 上条が美琴が超電磁方(レールガン)を打ってできた穴から逃げるように全力疾走しながら、後ろにいる美琴に言い放つ。 「これくらい、予想できなかったのか!?あっちは8人!こっちは3人!!はいどう考えても狙い撃ちですねあなたのハート(心臓)を嫌な方な意味で狙い撃ちですね分かります!!!」 「うっ…うっさいわねっ!!カッときちゃったのよ!」 「学園都市第3位が少しくらいカッときたからって能力暴発するんじゃねぇぇぇぇ!!?」 「お姉様…黒子の為に、後先ためらわずに、こんなことを…」 「黒子。今はあんたにかまってやれるほど余裕ないんだけど」 「ッ!?わ、私は相手にしないというのに、この殿方はお相手するんですの!?」 「ばっ、ちがっ――――」 「ええい黙ってろ!だからお前らが喋ると緊張感がなくなるわ!!状況理解してますか!?」 うっ、と美琴が小さくうめき、ふん、と黒子がそっぽを向く。 「とりあえず、ある程度の攻撃は俺が防ぐ。その間にあいつら(超能力者)が戦いづらい地形にでもしてろ!!」 それに美琴たちが反応する前に、 「そんなに甘くはないんだけどなぁ~」 突然、上条の目の前に14、15歳くらいの少年が現れて、言葉を発した。 「ッ!?」 とっさに上条が条件反射で後ろへ飛ぶ。 「それくらいの距離をとったくらいで、僕ら(超能力者)は攻略できないよ~?」 なぜか間延びした口調で言う少年。 「あなた…空間移動(テレポート)使いですわね」 「そうだけど~?だから…」 少年が言葉を続けようとした時、 バチィッ!!! と、その少年めがけてまったく容赦のない雷撃が襲った。 だが、美琴の能力は強大すぎるゆえ、攻撃する際、前兆のように音が響く。それを感じ取った少年は、何食わぬ顔で美琴の後ろに空間移動する。 「いきなり攻撃~?超能力者(レベル5)って、そんなに安っぽ―――」 だが、またもや少年の言葉の途中で美琴は体中から電撃を発する。やはり少年はあっさり回避するが。 「…お姉様」 黒子がつぶやく。 「…こいつは、あた―――」 「私にやらせてください、お姉様」 黒子が、『美琴の発言を遮ってまで』、言葉を発した。 「…?ちょ、黒――――」 「座標はここから北北西に47m。いいですわね?」 「へぇ~。怠慢はろうっての?」 そう少年が言ったときには、もう彼はいなかった。 「…お姉様」 黒子が、美琴のほうを振り返らずに言う。 「…私に任せて下さいな」 そういう黒子の声は、どこか震えていた。 「…」 美琴は黙る。 と、そこで突然、会話の中に入れていなかった上条が発言する。 「美琴」 ただそれだけ。それだけで何が伝わるのか。 だが、美琴は上条のほうをチラッと向く。そして、黒子の方に向き直る。 「黒子」 「なんですの、お姉様?」 「…分かってるわよね?」 「…私が、『そんな風』になるとでも?」 彼女の背中しか見えていないが、少し黒子が笑ったように見えた。 「私は死にませんわよ、お姉様」 そういって、彼女はその空間からいなくなった。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅵ Ⅴ 「…」 二人っきりになった上条と美琴。 なんか、途方もなく触れづらいこの空気は何ですか…、と上条は嘆いている最中である。 と、突然に。 「…あ~あ」 美琴が目をつぶって空を見上げ(建物はもう80%近く崩壊している)、吹っ切れたような笑みを浮かべて言う。 「黒子の奴…本当に、死んだら承知しないわよ…」 学園都市第3位の声が、考えられないほど弱弱しく聞こえた。 「…って事で!」 場の空気を変えるように、美琴が上条のほうを向く。 「あいつのことだから、私たちが向かっても空間移動(テレポート)で場所移動されてどうにもならないでしょうから…私たちは私たちでどうにかするわよ」 「それには全面的に賛成する上条さんですが…」 と、そこで一回言葉を切る。 「どうにかするって…具体的に何をどうするんだよ?」 この発言をした上条は、正直まともに美琴が答えられるとは思っていなかった。 「とりあえず、こっちからはちょっかい出しちゃだめね。今全力で叩かれちゃ、生きてられる可能性は限りなく低いし。まぁ、こっちに来た相手は私が適当にあしらうから、あんたはそのサポートをやって」 だが、美琴の発言は思ったいたものとはまったく違った。 「…超能力者(レベル5)ともなると、実戦経験も豊富なのか?」 「あんたほどじゃないけどね。一般人よりは遥かに多いわよ」 美琴が疲れたような笑みを浮かべながら言う。 「しっかし…」 上条が、思案気な顔を浮かべて言う。 「それにしちゃ、攻撃が少なすぎねぇか?」 「…」 これには美琴も答えられない。 「どう考えてもあっちの方が有利なんだ。こっちには一方通行(アクセラレータ)がいるとしても、俺らを潰すにはわけないはずだろ?何ですぐに潰さないんだろうな?」 「…」 やはり沈黙。 分からないのだ。相手の目的も、戦力も、能力も、何もかも。 こんな状態で、「何で相手は動かないのか」なんて聞かれても、読心能力(サイコメトリー)を持ってる能力者でもない限り、答えることは出来ないだろう。 と、そのとき。 ビュオオオ、と風が吹く音がした。 と、そう思った次の瞬間には、 「う、ぉおおっ!?」 「きゃぁっ!?」 上条と美琴の体が中に浮いていた。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅶ 「なっ…」 上条が条件反射のように右手を振り回す。 その右手には異能の力なら何でも問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。ただの風が人間の体を浮かすことなど中々考えられないため、能力者の仕業だと思ったのだろう。 だが、焦る上条たちに、 『馬鹿野郎がッ!!おとなしくしてやがれッ!!』 一方通行(アクセラレータ)の叫び声が、どこからか聞こえてきた。 「?こ、これ、一方通行(アクセラレータ)の能力でやるの?」 美琴が不思議そうな顔をしながら言う。自分の体が宙に浮いているのにパニックなどに陥らないのは、やはり戦闘経験が豊富だからなのだろう。 しかし、その上条たちを不安の中に落とすようなことが起こった。 突然、そこら中からいきなり炎が現れた。 「は…?」 突然のことにうまく反応できていない上条。美琴にいたっては発言も出来ない状況だ。 だが、すぐに上条の頭のスイッチが切り替わる。 「くそっ!また能力者かよ!?」 そう上条が叫び、それにより美琴が事態を受け入れる。 「発火能力(パイロキネシス)!?でも、どうやったのよっ!?」 今度は少しあわてる美琴。 対照的に、上条が冷静に思考し、叫ぶ。 「一方通行(アクセラレータ)!この空気のベクトル(向き)を俺のところだけ戻せ!!」 今は上空5mくらいのところに浮いている上条。もし一方通行(アクセラレータ)の能力が解かれたなら、右手(イマジンブレイカー)を下に向けて地面に着地するつもりだった。」 だが、一向に上条の体が重力により落下する気配はない。 「お、おい!一方通行(アクセラレータ)――――ッ!?」 大気を操っているはずの能力者の名を叫ぶ上条の前で、明らかに炎の威力が上がった。
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『ガゴンッ』 学園都市の男子寮で深夜にも関わらず大きな音が鳴り響く。 「うおっなんの音だこりゃ、土御門あたりが暴れてんのか?」 せっかく熟睡していた無能力者、上条当麻は騒音で不幸にも目覚めさせられた。 超能力者を育成しているここ学園都市ではこのようなことは珍しくもない、だがあまりにも近くから音がしたので上条は起きてみることにした。 学生寮であるこのアパートの一室は上条当麻が借りているのだが、とある事情により彼は部屋にあるベッドで睡眠をとっていない。 よってバスルームで眠っていた上条は、ひとまず現状把握のためバスルームからでてみることにした。 目をこすったりあくびしたりと、まだ半分寝ていた上条であったが玄関の光景をみて強制的に目覚められた。 玄関のそこにあるはずのドアがなぎ倒され、部屋側に倒れこんでいた。 「なっ、なんだこりゃ!なにか分からないけど不幸なのは確かだー」 上条はわりと近所迷惑並みの音量で叫んだ。 ドアは見事に歪んで再利用不可そうであり、犯人らしき人も見あたらなかった。 (新品近かったのになんで壊されてんだよ!チクショウっていうか誰ですか犯人は!) と上条は考えてみることにしたが (インデックス狙いの魔術師か?もしくはステイルがインデックスを連れ去りに?それともビリビリが…) あまりにも思い当たる人が多すぎたので一瞬でやめた。 (…ん?) 玄関の外で人影らしきものが動いた。 ってきり既に逃げたものかと思っていた上条は 「なんのつもりだ!てめえ!」 と叫びながら人影へと踏み出す。 (…は?) そこにはまるで予想もしていない人物がいた。 (なんでここにいるんだ?) 夏休みに学園都市外で海水旅行へ行ったときに出会い、殺されかけたこともある 夏休みに学園都市外で海水旅行へ行ったときに出会い、殺されかけたこともある ー連続殺人犯、火野神作がたっていた。 上条はあまりの唐突な再開に思考がとまりかけていた。 「…。」 「こんばんは。」 火野神作は軽くおじぎしながら礼儀ただしく挨拶をしてきた。 「…。」 「こんばんは。」 「…ってなに普通に挨拶してるんだテメェ!」 どうやら相手からなにかしてくる気配はなさそうだが、あくまで殺人犯である。 上条は相手への緊張を解かないながらも思考をめぐらせる。 (なんで学園都市内に当然としているんだ?というかこんな礼儀正しい奴じゃなかっただろ!…まさかまたあのバカ親父が占いグッズで魔法完成させたのかー!) 夏休みの旅行時と同じことになってるのかもしれない、と気づいた上条はひとまず『外見』と『中身』が一致してるか確かめることにした。 「こんな真夜中にドアをぶっ放してまで、会いに来てくれた馬鹿はどちら様でせうか?」 外見火野神作は、少し驚いたのか軽く目を見開き 「火野神作です。」 と『外見』と一致した名前を告げた。
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上条さんの寝癖がひどかったら、の巻 鮮やかな朝焼けに包まれる学園都市。その中のとある学生寮の一室の、洗面所から悲鳴が上がった。 「ぬぉおおおおう!!なんじゃあこりゃああああ!!」 悲鳴の主は不幸体質全開の少年、上条当麻だ。 「と、とりあえず水で濡らせば……」 キュッ、と栓を回して水を出し、手先を濡らして患部を触る。 「………、」 効果無し。 上条は濡らす量が足りないのだと思い、更に濡らすが、やはり効果が無い。 「くそっ、こうなったら……、あったあった」 すぅ、と息を吸い込み、 「てれれれってれ~♪ワックス~(のぶ代風に)」 濡れた手を拭き、蓋を開けて少量を手に取り、先程と同じように患部に付ける。 「よし、これでなんとかなったな」 ふう、と上条は溜め息を付くと、もさっ、と患部が崩れ落ちる。 「! ま、まぁこんなこともあり得るよな」 上条は驚愕したものの、冷静に治療する。 「おkおk、これで…」 もさっ。 ………………………、 ふざけんなーっ!と少年の叫び声が木霊した。 「とうま、朝っぱらから何を一人ではしゃいでいるの?すごく近所迷惑なんだよ?あたしのお腹も減ってるんだよ?」 少年の悲鳴に、不機嫌そうな声色で銀色シスターが洗面所を覗き込んできた。 「ご、ごめん、インデックス。だけどお腹減ってるのとこれは関係ないだろ?」 洗面所入口でこちらを覗き込んでいるインデックスを見る。 「…誰?」 こちらを見ている少女は何やら警戒している。 「誰、って、俺だよインデックス」 「とうまはどうしたの?」 「いや、だから俺!上条当麻だって!」 「そんな嘘付いても無駄だよ?とうまはね、頭がウニウニしいんだから。そんなぺたーってなんかしてないんだよ?」 「ウニウニしいってなんだよ!俺の頭は魚介類か!」 「それよりもとうまは?」 「だから俺だって!寝癖がすごいけど俺だって!」 必死に上条当麻であることを証明しようとしているのだが、全く信用してくれないインデックス。 そんなインデックスに、上条はあることを閃く。 「なぁ、インデックス」 「なに?」 インデックスの警戒心MAXな声に、うっ、と上条はたじろぐが、負けずに、 「俺の頭を噛んでみろ。そうすれば俺だってわかる筈だ!」 流石俺!でも痛いけど俺名案!、と上条が心の中で自画自賛していると、 「嫌だよ。なんでどこの馬の骨ともわからない人の頭を噛まなきゃいけないの?」 「そんなに信用無いの俺!?ってか、もう時間ねぇ!インデックス、昨日の残りが冷蔵庫に入ってるから 勝手に食べてろな!」 上条は信用してもらえないことに虚しくなったが、時間を確認すると、時間的に限界がきていた(頭のセットに手間取りすぎた)。 「あっ!」 「行ってきます!」 未だに不審がるインデックスに挨拶し、学生鞄を持ち、玄関を飛び出し、上条は学園都市を走り出し、学校を目指した。
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STAGE00 アリサ編 STAGE01 STAGE02 STAGE03 STAGE04 STAGE05 STAGE06 STAGE07 STAGE08 STAGE09 STAGE10A STAGE11 STAGE12 STAGE13 STAGE14 STAGE15 STAGE10B STAGE16 STAGE17 STAGE18 STAGE19 STAGE20 STAGE21 STAGE22 STAGE23 STAGE24 STAGE25 STAGE26 STAGE27 STAGE28 STAGE29 STAGE30 STAGE31 STAGE32 STAGE33 STAGE34 STAGE35 STAGE36 STAGE37 STAGE38 STAGE39 STAGE40 STAGE41 STAGE42A STAGE43 STAGE44 STAGE45 STAGE42B STAGE46 STAGE47 STAGE48 STAGE49 STAGE50 STAGE51 STAGE52 STAGE53 STAGE54 STAGE55 STAGE56 STAGE57 STAGE58 Ending ストーリーイベントインターミッション 上海 USN艦隊 上海市街 STAGE39ランキング マップ 入手アイテム 味方 NPC 敵 ストーリーイベント インターミッション セットアップ ネットワーク フォーラム メール ネットワークショップ デスクトップ シミュレーター セーブ ロード 終了 上海 〔海軍基地司令室〕 会話イベント ネットワーク ネットワーク 入手 備考 メール ラン 受信 コォワン「お久しぶりです。」 会話-オペレーター「海上油田プラント」のシミュレーターマップ入手 会話-リュウ USN艦隊 〔USN空母司令室〕 会話イベント 上海市街 〔海軍基地宿舎〕 会話イベント 〔海軍基地司令室〕 会話イベント 会話-レベッカ『USN海軍』のアドレス入手 移動-宿舎 〔海軍基地宿舎〕 会話イベント 移動-基地を出る 上海市街-上海酒場 〔上海酒場〕 会話-ウワサ好きのチャオ 会話-ウワサ好きのチャオ『アミイカ』のアドレス入手 ネットワーク ネットワーク 入手 備考 フォーラム アドレス 『両虎ソフト』 『大漢中人民共和国/その他/アミイカ/情報広場/情報広場に入る/情報 3』を参照 デスクトップ ツール ピカレスク 『大漢中人民共和国/その他/アミイカ/ダウンロード/ダウンロード広場に入る/ダウンロード:ピカレスク』でダウンロード 圧漢Q 『大漢中人民共和国/企業/両虎ソフト/制品介紹(Products)/軟件下載(Download)』でダウンロード(価格:500) テキストデータ SpenderDiary《ウェン・シャンザイのスペンダー日記》 『大漢中人民共和国/その他/アミイカ/ダウンロード/ダウンロード広場に入る/ダウンロード:情報データ』でダウンロード(価格:200) グラフィックデータ DNA Analysis《DNA構造の分析》 『大漢中人民共和国/その他/アミイカ/ダウンロード/ダウンロード広場に入る/ダウンロード:画像データ』でダウンロード パスワード [REBSY] テキストデータ「SpenderDiary《ウェン・シャンザイのスペンダー日記》」に密文同士を使用後、参照 [PLANM] [SURSLN] [EMIR] [RAT2C] グラフィックデータ「DNA Analysis《DNA構造の分析》」にピカレスクを使用後、参照 [OVERRN] 移動-店を出る 上海市街-東方明球塔 〔東方明球塔〕 会話イベント 会話-女 〔上海酒場〕 会話イベント 会話-メイヤー ネットワーク ネットワーク 入手 備考 メール 和輝 受信 桐生悠一「クーデター」 会話-メイヤー 〔海軍基地宿舎〕 会話イベント 会話-美穂メイヤー加入 〔海軍基地司令室〕 会話イベントリュウ復帰 ネットワーク ネットワーク 入手 備考 フォーラム アドレス 『USN特殊放射線研究所』 『USN/政府/F.A.I/関係者用/FAI INTERNAL INFORMATION[IAF001]/THE ORIGIN OF MIDAS』を参照 『ラーブヌイ国営科学研究所』 『USN/政府/F.A.I/関係者用/FAI INTERNAL INFORMATION[IAF001]/IMAGINARY NUMBERS』を参照 『サイナミックソフト』 『USN/政府/USN特殊放射線研究所/関係者用[SURSLN]/E-MAIL RECORD BETWEEN RESEARCHERS/WILLIAM BACKHOLTZ - EMIR KRAMSKOI』を参照 『イントレピッドステュピッド』 『USN/政府/USN特殊放射線研究所/関係者用[SURSLN]/E-MAIL RECORD BETWEEN RESEARCHERS/WIL KEN - EMIR KRAMSKOI』を参照 『ディアブルアビオニクス』 『USN/企業/サイナミックソフト/トピックス/ドライバー紹介』を参照 パスワード [08DHMD] 『大漢中人民共和国/企業/両虎ソフト/伺候机(Server)[CLOT]/絶密資料1』を参照 [MARINE] 『大漢中人民共和国/企業/両虎ソフト/伺候机(Server)[CLOT]/絶密資料2』を参照 [IAF001] 『USN/政府/USN海軍/関係者用[MARINE]/CAPTAIN OF THOMAS JEFFERSON FLEET』を参照 メール リュウ 受信 パスワード [ALONE] マイク・デービス「IN報告03」 テキストデータ Report ANTHONY《アンソニー・バーキンスに関する報告書》 美穂 受信 パスワード [CLOT] キンカクジ「NO.0125」 デスクトップ ツール ノーウェイトリフティング 『USN/企業/サイナミックソフト/トピックス/製品情報(ダウンロード可能)』でダウンロード(価格:500) 背景グラフィック Game《Xday in London》 『USN/企業/サイナミックソフト/トピックス/新作ゲーム紹介』でダウンロード DregM2C《ドレーグM2Cの3DCG》 『USN/その他/イントレピッドステュピッド/ダウンロード/ダウンロード:ドレーグM2Cの3DCGイラスト』でダウンロード パスワード [FIINNO] テキストデータ「Report ANTHONY《アンソニー・バーキンスに関する報告書》」に密文同士を使用後、参照 移動-基地を出るSTAGE39 上へ STAGE39 広島森林公園 勝利条件 敵パイロットの全滅もしくは投降 敗北条件 プレイヤーパイロットの全滅もしくは日防軍兵士の死亡 出撃パイロット選択 和輝 / 亮五 / アリサ / リュウ / 美穂 / ファム / ラン / メイヤー ランキング 基準値 敵排除数 5 総戦闘回数 20 平均ダメージ 85 平均武器レベル 13 ターン数 5 NPC残数 - マップ 地形 進入不可 段差 スロープ ▼ 障害物 平地 不整地 緑地 X 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 Y 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 気絶不可 - 混乱不可 - 戦意喪失、投降不可 - 強制排出不可 - 序盤、敵ユニット(敵1 / 2)は移動後、味方ユニットが接近するまで行動しない 上へ 入手アイテム 入手先 名称 備考 敵4 / 5投降 バックパック BX056 上へ 味方 No. 名前 移動力 バーツ 武器 人物 アイテム APNow / Max Body HP状況Now / Max 格闘力 減少率 AP設定/改造LV 防御 L.Grip 属性 種類 AP 熟練 攻撃 弾数Now / Max 射程 命中率 距離低下率 段差低下率 HPNow / Max エースランク ポイント バトルスキル L.Arm 命中 命中 L.Shld 武器熟練度 回避(回避率) R.Arm 命中 R.Grip 格闘武器 ショットガン グレネード Leg バーニア ダッシュ 回避 R.Shld マシンガン 火炎放射 キャノン 属性防御 B.Pack 追加出力 ライフル ミサイル ビーム 1 × 2 × 3 × 4 × 上へ NPC No. 名前 移動力 バーツ 武器 人物 アイテム PRIZEMONEY APNow / Max Body HP状況Now / Max 格闘力 減少率 AP設定/改造LV 防御 L.Grip 属性 種類 AP 熟練 攻撃 弾数Now / Max 射程 命中率 距離低下率 段差低下率 HPNow / Max エースランク ポイント バトルスキル L.Arm 命中 命中 L.Shld 武器熟練度 回避(回避率) R.Arm 命中 R.Grip 格闘武器 ショットガン グレネード Leg バーニア ダッシュ 回避 R.Shld マシンガン 火炎放射 キャノン 属性防御 B.Pack 追加出力 ライフル ミサイル ビーム 5 五木修 3 110式 陣陽 584 / 584 -- 15% ■ ■ ■ 日西90MF 貫通 マシンガン 5 D★ 18×10 ∞ 1~4 80% 10% 5% 20 / 20 ★★★★★ ×0 - 15 / 15 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP 10式装甲 シールド 2 ダメージ 70%減 6 / 6 耐炎熱 110式 陣陽 481 / 481 6段 3倍 ■ ■ ■ ------ D★ BPT12B 60 上へ 敵 No. 名前 移動力 バーツ 武器 人物 アイテム PRIZEMONEY APNow / Max Body HP状況Now / Max 格闘力 減少率 AP設定/改造LV 防御 L.Grip 属性 種類 AP 熟練 攻撃 弾数Now / Max 射程 命中率 距離低下率 段差低下率 HPNow / Max エースランク ポイント バトルスキル L.Arm 命中 命中 L.Shld 武器熟練度 回避(回避率) R.Arm 命中 R.Grip 格闘武器 ショットガン グレネード Leg バーニア ダッシュ 回避 R.Shld マシンガン 火炎放射 キャノン 属性防御 B.Pack 追加出力 ライフル ミサイル ビーム 1 日防軍特殊部隊ヴァンツァー兵 3 110式 陣陽 584 / 584 116% 15% ■ ■ ■ 日西90MF 貫通 マシンガン 5 D★ 18×10 ∞ 1~4 80% 10% 5% 20 / 20 ★★★★★ ×0 Fallショット 150 15 / 15 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% D★ 耐貫通 110式 陣陽 481 / 481 6段 3倍 ■ ■ ■ ------ D★ ------ 2 日防軍特殊部隊ヴァンツァー兵 3 110式 陣陽 584 / 584 116% 15% ■ ■ ■ 日西90MF 貫通 マシンガン 5 D★ 18×10 ∞ 1~4 80% 10% 5% 20 / 20 ★★★★★ ×0 Fallショット 150 15 / 15 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% D★ 耐貫通 110式 陣陽 481 / 481 6段 3倍 ■ ■ ■ ------ D★ ------ 3 日防軍特殊部隊ヴァンツァー兵 3 110式 陣陽 584 / 584 116% 15% ■ ■ ■ 日西90MF 貫通 マシンガン 5 D★ 18×10 ∞ 1~4 80% 10% 5% 20 / 20 ★★★★★ ×0 Fallショット 150 15 / 15 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 110式 陣陽 364 / 364 ×10%UP ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% D★ 耐貫通 110式 陣陽 481 / 481 6段 3倍 ■ ■ ■ ------ D★ ------ 4 日防軍特殊部隊ヴァンツァー兵 2 109式 炎陽 502 / 502 115% 15% ■ ■ ■ ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% 20 / 20 ★★★★★ ×0 パニックショット ミサイル弾リペアMax 150 15 / 15 109式 炎陽 316 / 316 ×12%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 109式 炎陽 316 / 316 ×12%UP ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% D★ 耐炎熱 109式 炎陽 463 / 463 7段 4倍 ■ ■ ■ ナイチンゲール 炎熱 ミサイル 10 D★ 124×1 6 / 6 3~9 80% 0% 0% BX056 D★ 5 日防軍特殊部隊ヴァンツァー兵 2 109式 炎陽 502 / 502 115% 15% ■ ■ ■ ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% 20 / 20 ★★★★★ ×0 パニックショット ミサイル弾リバースMax 150 15 / 15 109式 炎陽 316 / 316 ×12%UP ■ ■ ■■ ■ ■ ------ 32% 109式 炎陽 316 / 316 ×12%UP ハードブロウ 衝撃 格闘武器 1 D★ 25×1 ∞ 1 100% 0% 0% D★ 耐炎熱 109式 炎陽 463 / 463 7段 4倍 ■ ■ ■ ナイチンゲール 炎熱 ミサイル 10 D★ 124×1 6 / 6 3~9 80% 0% 0% BX056 D★ 上へ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ Let s_make_a_pumpkin_pie! 10月末となった土曜日。 明日はいよいよハロウィンパーティ当日だ。 そんな土曜の10時頃に、美琴はとある自販機前に来ていた。 別に蹴りに来たわけではない。とある人物との待ち合わせである。 「アイツいつまで待たせるつもりよ……」 待ち合わせ時間はとっくに過ぎていた。もうちょっとで30分経つ。 イライラし始めた美琴が久々に自販機を蹴ってやろうとか思い始めていた、その時。 「ごめーん。待ったー?」 どこかで聞いたようなセリフが、そのセリフに似合わない男の声で聞こえてきた。 「待ったー? じゃ、ないわよ!!」 電撃炸裂。ふざけたセリフとともに登場した待ち人を、美琴が問答無用で迎撃した。 「うおっ!? あっぶねー……冗談が通じない奴だなぁおい」 「アンタ、それが人を1時間も待たせた人間の言うセリフかしら?」 「いや、そりゃ悪かったけどさ。にしたって電撃は割に合わないって……て待てよ。1時間てお前、約束時間の30分前から待ってたのか?」 「そ、そうだけど……立ち読みしてた漫画が思ったより早く読み終わっちゃったから早く着いただけよ何か文句ある!?」 息継ぎせずに言葉を並べ立てたせいで、少々息が荒くなる美琴。 興奮したせいで、額からは青白い火花が散っている。 「いや文句とかないからその火花をどうかお納め下さい」 迷わずその場で美しい土下座を決める上条。土下座の美しさを競う大会があれば、必ず優勝出来るに違いない。 「ふんっ。最初から素直にそうやってれば良かったのよ、馬鹿」 「申し訳ございませんでした、姫」 「もういいから立ちなさい。ただでさえ時間押してるんだから、早くアンタん家に行くわよ」 情けなく土下座している上条に、美琴が右手を差し伸ばす。 その手を取って立ち上がった上条は、美琴が左手に下げている袋に気付いた。 「それは?」 「ん? あ、これ? エプロンとかレシピとかよ」 「ああ、じゃあ俺が持つよ」 上条は美琴が持っていた袋をヒョイと取り上げる。 「そんなのいいわよ」 「いいって。遅れたお詫びな」 ニカっと笑って歩き出す上条の後を、美琴が慌ててついて行く。 はぐれるわけにはいかない。なぜなら、 (やっと当麻の家に行けるんだ……!!) 今日は美琴が初めて、上条宅を訪れる日なのである。 先週、佐天から一斉送信されたメールにはこう書いてあった。 ★ ★ ★ みなさーんっ いよいよ来週は待ちに待ったハロウィンパーティですね! というわけで、今日は役割分担を発表します☆ 土御門さん&青ピさん クラッカーを人数分お願いします。 他にも面白そうなパーティグッズがあれば是非! 婚后さん&湾内さん&泡浮さん 何でもいいのでお菓子をお願いします。 たとえば、パスティッチェリア・マニカーニとか たとえば、パスティッチェリア・マニカーニとか たとえば、パスティッチェリア・マニカーニとか! 御坂さん&上条さん 手料理担当 白井さん&初春&佐天 手料理担当 初春との独断ですが、ヨロシクお願いしますねw 手料理班はキッチンの広さとスキルの都合上、2つに分けてます。 作るものは相談して決めましょう★ ではではっ ★ ★ ★ それは美琴にとってあまりにも衝撃的内容であった。 読み終わった瞬間は、学区を越えてまでして手に入れた限定ゲコ太マスコットを、思わず握り潰してしまいそうになるくらい。 (あ、アイツと2人でててて手料理!?) しかも、2人が住んでいる寮の関係上、必然的に美琴が上条宅へ赴いて料理することになるわけだ。 その翌日、佐天から電話が掛かり、互いの役割分担の詳細を決めた。 美琴と上条に任された料理は、パーティのメインとも言えるもの。 『私たちは簡単なご飯ものを作るので』 電話の向こうから聞こえる、佐天の明るい声。それが告げたのは、 『御坂さんたちはパンプキンパイを作って下さい♪』 実にハロウィンらしいお菓子の名前だった。 他愛もない会話を交わしていると、程なくして上条の寮へと着いた。 先を行く上条の後を、美琴はドキドキしながらついて歩く。 すると、とあるドアの前で上条が立ち止まった。 「ここが俺の部屋。さっきから言ってる通り、常盤台の寮とじゃ広さの綺麗さの比べ物にならないからな」 「わ、わかってるわよ」 表札にある確かな「上条」という文字。その文字をじーっと見詰める美琴の頬は、みるみる赤くなってゆく。 (いつか私も上条美琴に……) 「おい、何突っ立ってんだ? 早く入れよ」 「ふぇ?」 美琴が我に返れば、上条はすでに中に入っていて、美琴のためにドアを開いている状態であった。 「あ、う、うん」 美琴が入った瞬間、背後でガチャンという音がする。上条が鍵を掛けたのだ。 「っ!!」 緊張で背筋がぞくっとした美琴だが、上条は何も気にすることなく部屋へと上がる。 「ここが洗面所だから。手洗ったら早速始めようぜ」 「わ、わかったわよ。よーし……」 何やら一人意気込んでから、美琴は靴を脱ぐ。 部屋中に満ちる上条の匂いに、頭がくらっとするも同時に安心感を覚えた。 (せ、せっかくのチャンスだもん。料理が出来るってとこ、アピールするべきよね) 脱いだ靴を綺麗に揃えて置き直し、手を洗うために洗面所へと入る。 先に手を洗った上条が、すれ違い様に壁に掛けてあるタオルを指差した。 「あのタオル使えばいいから」 「あ、うん。ありがとう」 しかし、手を洗い終えた美琴はタオルに手を伸ばしたところで固まる。 「……、」 タオルがすでに湿っている。先に上条が使ったのだから当然そうなるわけだが、問題はそこではない。 (アイツ、顔も洗ってた) そう、暑かったのかは知らないが、上条が水で顔を洗ってタオルで拭いていた。ということは、 (これを触れば間接的にアイツの顔を触ったも同じっッッ!?) 恋愛初心者、御坂美琴。 彼女にとってこのハードルは高かった。 「やっと来たか。随分と遅かったな?」 「う、うっさい。女の子には色々とあるのよ」 「ふーん。まぁ、いいけどさ」 結局、1分程固まった後に美琴はキッチンへ現れた。言うまでもなく、顔はリンゴのように赤い。 「お前のエプロン、そこに置いてあるから」 そう言う上条はすでに自分のエプロンを付けていた。シンプルな青いエプロンで、ポケットなどが付いている実用的なタイプだ。 一方、美琴のエプロンは実用的とはいえないデザインだった。可愛さ重視の薄いピンク色のエプロンで、白レースまで付いている。 「へぇ、なんか意外だな」 「どういう意味よ?」 「いや、てっきりカエル柄かと思ってたからさ」 「わ、私だってこういうのも持ってるわよ!」 珍しくカエル柄でないのは、今日を意識しての選択だ。 子供っぽいものが少女趣味になっただけで実際あまり大差はないのだが、美琴にしては大きな進歩と言えるだろう。 「よし。御坂が持ってきてくれたレシピもあるし、早速始めるとしますか」 「材料と器具は揃ってるわよね?」 「ああ。お前のメール見て、指示通りに出しておいたぞ」 得意げにキッチンに並んだ調理器具を見せる上条。 「材料は……」 「卵やバターは冷蔵庫の中。調味料とカボチャはこっち」 レシピを見ながら美琴が最終確認を行う。 「うん、下準備もバッチリ。バターもちゃんと2cm角で切ってくれてるし。さすが自炊してるだけのことあるわね」 「まぁな。でも、菓子作りは初めてだからさ。お手柔らかに頼みます」 「美琴センセーに任せなさいっ♪」 何かすることがあるというのはいい。 料理をするという目的があるおかげで、美琴は先程までのように過剰に上条を意識せず、リラックス出来るようになっていた。 「じゃあ、まずはどうするんだ?」 「水と卵黄を合わせて混ぜて。出来たら冷やしておいてね」 「お前は?」 「薄力粉とバターを混ぜるわ。あ、今からするのは生地作りね」 「おう」 バターが米粒大になるまで美琴が混ぜ終わった後、上条が混ぜた冷水と卵黄を混ぜたものを加えた。 生地を一纏めにするのは、上条が自ら進んで引き受けた。 それをラップフィルムで丁寧に包み込んだ美琴は、冷蔵庫の扉を開けて言う。 「ひとまずこれで終わり。続きは1時間後、生地が冷えてからね」 「へ? もう終わりなのか?」 「冷えてからに型に敷くの。冷えてた方がさっくりとした生地が作れるらしいわよ」 美琴はレシピに書かれたワンポイントアドバイスなる箇所を指差す。 「確かに。でもさ、御坂」 上条はレシピに目を通して首を傾げた。 「こうなるって知ってたなら、生地づくりは俺が昨日の内に終わらておいた方が良かったんじゃないか? このレシピを見る限り、生地を型に敷いた後にも最低1時間冷やすって書いてあるし、出来れば1日冷やした方がいいとも書いてあるぞ」 もっともな上条の疑問。 しかし、美琴は平然と答える。 「いいのよ、これで。この時間はお昼ご飯作るし、次の1時間だって他にすることあるし」 「へ? 昼飯、作ってくれるのか?」 「え、いらないの? 明太子クリームパスタ作るつもりなんだけど……」 そう言って、美琴はエプロンを入れていた袋を指差す。 どうやら中にはパスタの材料も入っていたらしい。 「いや、食べる! でも、次の1時間は? 何するつもりなんだ?」 「そんなの決まってるじゃい」 美琴はさも当然といった様子で答える。 「アンタの宿題を片付けるのよ。どうせ今週もまた大量に出されてるんでしょ?」 「うっ!? なぜそれを御坂さんが知ってるんでせうか!?」 「聞かなくったってわかるわよ。いつものことじゃない」 「うっ……返す言葉がありません」 高校生が中学生に宿題のことを指摘されるとはこれ如何に。 とは言っても、相手は学園都市第3位にして大学レベルの授業を受けている少女。学力の差は明らかだ。 「わかったらエプロン外して、アンタは宿題に取り掛かりなさい。パスタは私1人で作れるから」 「了解であります……」 土曜の昼前より始まった上条と美琴のパンプキンパイ作り。 どうやら今日は美琴センセーの家庭教師dayでもあったようだ。 お昼に食べた美琴お手製の明太子クリームパスタは絶品だった。 本人曰く簡単な料理らしいが、上条が作るそれよりも遥かに美味しかった。 「ごちそうさまでした。いやいや本当に美味かったですよ」 「そう言ってもらえると作りがいあるわ」 喜んで完食してくれた上条に、美琴はにっこりと微笑みかけた。 口周りに少しクリームソースが付いている上条を、とても愛おしく感じる。 「そろそろ1時間経ったし、生地作りに戻りましょうか」 「おっ、もうそんな時間か」 上条は2人分の皿を持って立ち上がると、キッチンへと運ぶ。 「洗うのは俺がするからさ。生地の方頼んでいいか?」 「いいわよ。そっちが終わったら手伝ってね」 「もちろんですよ」 冷蔵庫から取り出した生地を、美琴はパイ皿より一回り大きくなるように麺棒で伸ばす。 その途中で、洗い物を終えた上条が交代した。 「これくらいでいいか?」 「うん、いい感じ」 出来上がった生地を型に敷き込むのは美琴の役目になった。 上条曰く、「不幸な俺がやったら生地が破れるに違いない」ということらしい。 「これでパイの部分は完成か?」 「ううん、まだ」 パイ皿からはみ出た生地をナイフで切り取りながら、美琴が簡潔に答えた。 「本当はこれで完成でもいいんだけどさ。せっかくのハロウィンだし、ちょっと手の込んだことしてみようかなって思うんだけど」 「どうするんだ?」 「ここにある余ってる生地と、そこに置いてある星形の型抜きを使うの」 「この型抜き、お前が持ってきたのか?」 「うん。まぁ、見てなさいって」 美琴の手によって、余っていた生地から次々と可愛らしい星が生まれる。 「ね、卵黄ちょっと用意して」 「卵黄?」 「いいから、早く」 上条が指示通りに卵黄を用意すると、美琴はそれを型に敷いた生地の周囲に塗り始めた。 そして、それを接着剤代わりに、先程作り出した星を貼り付けてゆく。 「出来たっ!」 最後に型ごとラップフィルムをして、美琴は再び生地を冷蔵庫に戻した。 「これでパイ部分は完成よ。最低1時間だけど、長ければ長いほどいいから、アンタの宿題を片付けてから次の作業に移りましょう」 上条の方へと振り返り、にっこりと家庭教師モードへ移行する美琴。 「まずはさっき頑張ってたところ、見てあげるわ」 「是非お願いします、美琴センセー」 この週末、上条が小萌先生から頂戴した宿題(と+αな課題たち)は、美琴の助けをもってしても3時間掛かってしまう多さだった。 ちなみに、美琴1人でならば1時間足らずで片付けられる内容だったが、あくまで上条が理解出来るまで説明した結果が3時間なのだ。 「陽が大分傾いてきたわねー」 「そうだなぁ……って! もう16時前じゃねーか!?」 「まぁまぁ、これで明日も心置きなく騒げるんだからいいじゃない」 にっこりと微笑む美琴が、上条には一瞬マリア様のように見えた。 いやそれどころか、神様の御加護さえ打ち消すという右手を持つ上条にとって、課題という現実的な苦しみに共に立ち向かってくれる美琴は、 実際のマリア様以上に尊い存在と言えるかもしれない。 「さてと。課題も全部片付いたことだし、作業に戻りましょうか。生地も3時間冷やせば十分だしね」 美琴は脱いでいたエプロンを再び身に付けた。 「フィリング作るから、カボチャの種と皮を取り除いてくれる? 終わったらレンジで2分半ね」 「おー、了解」 忘れない内に提出物を学生鞄の中へと入れ、上条も再びエプロンを身に付ける。 2人のパンプキンパイ作りは、今再びスタートした。 上条が裏ごししたかぼちゃに、美琴がサワークリーム、グラニュー糖、シナモンパウダーを順に加える。 「パイ生地出してくれる?」 「おいよっ」 冷蔵庫から冷えたパイ生地を取り出す上条。 滑らかになるまでフィリングを混ぜ合わせていた美琴は、出来上がったそれをパイ生地へと流し込む。 「ね、オーブン予熱してくれたのよね?」 「ああ。180℃だろ?」 「うん。じゃあこれを中に。タイマーは45分ね」 「わかりました美琴センセー」 「い、今はもう先生じゃないわよ馬鹿」 ちょっと頬を赤らめて否定する美琴だが、まんざらでもないようだ。 どのような形であれ、想い人に名前を呼ばれるのは嬉しいらしい。 パイをオーブンに入れた後、2人は調理器具の後片付けを始めた。 しかし、それも5分程で終わってしまい、今日1番の沈黙が2人を包む。 「……、」 「……、」 料理も終わり、課題も終わり、あとはパイの焼き上がりを待つのみ。 することがなくなってしまった今、美琴は例のタオルを目の前にした以来のテンパり具合を見せていた。 (ど、どうしよう……すごく緊張するんだけどっ!?) 一方の上条も、見た目はともかく内心は心臓バクバクである。 (こんなしおらしい御坂、御坂じゃねえ! コイツこんなに可愛かったか!?) いや、それは恋する乙女に失礼じゃないか上条当麻。 現在、美琴は上条と一緒に上条のベッドにもたれ掛かって座っていた。 理由は簡単で、上条の部屋に椅子なるものがないからである。 ちなみに、2人の間は30cmほど空いている。 「ね、ねぇ。テレビ付けてもいいかしら?」 「も、もちろんいいぞ。どうぞお付け下さい。何かいい番組やってるといいな」 少しでもこの空気を変えようと、テレビを付ける2人。 どうやら恋愛ドラマの再放送をしているようだ。しかも、ちょうど山場らしい。 『ヒロシさん……』 『もう君を離さないよ。君は僕のモノだ!』 『ヒロシさんっッッ!!』 ……付けたタイミングが悪かった。 「「っ!?」」 突然液晶画面いっぱいに映るとある男女のキスシーン。 慌ててテレビを消した美琴であったが、それが余計に空気を重くした。 「「……、」」 あからさまな過剰反応は、「意識してます」と言っているも同然なのだ。 「あ、あのな御坂」 「な、何よ?」 「気にしなくていいから、さ」 「な、何のことかしら? 別に私は何も気にしてないんだけど?」 ツンとした態度をとる美琴。 仮にもしここで、 『そんなこと言われたって意識しちゃうに決まってるじゃない! だって私、当麻のことが大好きなんだからっ!』 ……とでも言えれば新たなカップルが誕生したのかもしれないが、残念ながら美琴がそんなに素直なわけもない。 「いや、気にしてないんならいいんだけどさ」 ツンとした美琴に、ちょっぴり残念そうな笑顔を向ける上条。 (意識してたのは俺だけだったのかな……) そんなわけはない。ないのだが。 鈍感な上条と素直になれない美琴は、互いの気持ちを読み取ることがなかなか出来ない。 そのまま気が付けば40分経っていた。 オーブンがアラームを鳴らして焼き上がりを告げる。 「あ、焼けた」 キッチンへと戻り、オーブンを開ける美琴。 開ける前からいい匂いが漂っていたが、焼き加減も完璧であった。 「わぁ! 美味しそうに出来たじゃない。ちょっとー、アンタもこっち来て見てみなさいよー」 しかし、上条からの返事はない。 不信に思ってベッドの方を見てみると、 「……、寝てる?」 そう、上条は頭をベッドの上に乗せて寝てしまっていた。 実は焼き上がる数分前から寝てしまっていたのだが、テンパっていた美琴は全く気付いていない 「もう、仕方ないわねー」 肌寒い季節だ。このままだと風邪をひいてしまうかもしれない。 「ほら。まぁ、アンタ今日はよく頑張ったものね。お疲れ様」 ベッドの上から毛布を引き抜き、上条へと掛けてやる。 そしてキッチンへ戻ると、冷蔵庫を開けた。 「……なるほどね。よし、決めた」 再びエプロンを身に付ける美琴。 上条がまだ寝ているのを確認してから、美琴は再びキッチンに立った。 上条が目を覚ますと、外は真っ暗になっていた。 「……あれ?」 掛けた覚えのない毛布を見て、すぐに美琴がいることを思い出す。 「やべ! 寝ちまったのか俺!?」 キョロキョロと辺りを見回すが、人の気配はない。どうやら美琴はもう帰ってしまったようだ。 「悪いことしたな……電話して謝るか」 時計を見れば20時を回っていた。3時間ほど眠ってしまっていたらしい。 キッチンへ行けば、冷蔵庫にメモ用紙が貼り付けてあった。 『パンプキンパイ、冷蔵庫の中で冷やしてます。白い箱のがそうだから、明日絶対忘れないように! 美琴』 冷蔵庫を開けてみれば、確かに白い箱が入っていた。箱の側面には、なめらかな筆記体で『pumpkin pie』と書いてある。 「筆記体書ける奴ってカッコイイよなぁ」 そんなことを呟きながら、冷蔵庫の扉を閉める。 その際、上条はメモの続きがあることに気付いた。 メモは告げる。 『P.S. 簡単なものだけど晩ご飯作っといたから食べて』 「晩ご飯?」 冷蔵庫を再び開けるが、それらしきものは見つからない。 どこにあるのかと周りを見回せば、調理台のところにラップフィルムが掛けられたそれが見つかった。 「これは……!」 それは、美琴お手製の肉じゃがだった。 まさに昨日、上条自身が肉じゃがを作るつもりで買っていた食材を、急遽晩ご飯を作ろうと思い立った美琴が使ったのだ。 まだ温かいことを考えると、美琴は先程作り終わって帰ったところに違いない。 再びレンジで温める必要もなく、上条はそれをそのままテーブルへと運んだ。 「いただきます」 その肉じゃがは昼のパスタ同様、上条が作るそれよりもずっと美味しかった。 何が違うってそりゃ美琴の愛が詰まってるから……というわけでなく、きっと上条にはわからない隠し味やポイントがあるに違いない。 もちろん、上条が感じ取っているかは別として、美琴の愛がたっぷり含まれているは本当だろう。 「美味しい……アイツ絶対いい嫁さんになるだろうなぁ」 そのアイツはお前の嫁になることを望んでいるんだよ、上条当麻。 ……というようなツッコミを入れてくれる人がいれば良かったのだが、そんな都合の良い展開はない。 しかし。 「勉強も見てもらって、こんな美味しいご飯も作ってもらえて、上条さんは本当に幸せ者ですな。御坂もビリビリさえしなきゃ可愛い女の子なんだもんなぁ」 食べ終わった上条は、そんなことを呟くいて頬を染める。 応援隊の作戦通り、恋する美琴の手料理は確かに上条の胃袋を掴んだのみならず、その鈍感な心をもちょっぴり動かせたようだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある10人のハロウィンパーティ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある両家の元旦物語 後編 御坂美琴は温かい水で顔を洗っては、冷たいタオルで目を冷やす、を繰り返している。 泣きすぎて目が腫れぼったくなってしまったため、血行を良くする応急処置だ。 当然スッピン状態に戻っている。 「美琴ちゃん、どれだけ泣いたのよこれ…絞ったら水したたりそう」 「うぅ・・・」 詩菜に借りたミニタオルは見事にぐしょぐしょだ。 「まあでもそれだけ泣いて、アタックも成功したし。完全に浄化されたわね♪」 「う、うるさい!」 未だに信じられない。 …いや、あの男は想像以上の肩透かしをしてくる。 油断はできない…けど。 (この部屋でたら、どんな顔したらいいの…アイツの前でどうしたら…!) とりあえず考えないようにして、バシャバシャ顔を洗い続ける。 他の4人は部屋に戻っている。 案内係が昼食をセットしてくれている。『懐石おせち』というものらしい。 上条がもの珍しげに眺めていると、御坂旅掛が近寄ってきた。 「当麻くん、ちょっといいかな?」 「は、はい」 こ、殺される? 上条がまず思ったのはソレである。 娘があれだけ泣かされてキスまでされて、心安らかなはずがあろうか、いや、ありえない。 自分の両親をちらっと見たが危機感はないようだ。 (とりあえず、大丈夫なの、か…?) 促されて、またベランダから外に出る。 先手必勝。 「す、すみません。娘さんを泣かせてしまいまして。それに…」 「ああ、それはいい。俺は子供の世界には首を突っ込まないよ。正しいと思ったことをやればいいさ」 旅掛は事もなげに言う。 「ただ、君に聞きたいことがあってね。妻たちがいない今しか」 言うやいなや、旅掛は上条の両肩をガシッと掴む。上条は流石にビビる。 (な、なんだーー?) 「こうすれば、君の表情は読み取れるからね」 そう言って旅掛は、ゆっくりと上条に問う。 「私の娘は美琴ただ一人だ。…決して双子じゃないんだが、君はどう思う?」 言葉が浸透するのにコンマ何秒かかかったが、意味を理解すると。 (シスターズ…!) 思い浮かべてしまった。もとより、上条は感情で動く人間だ。表情を作るような器用な事はできない。 「ビンゴ、か。美琴は知っているのかな?」 上条は目をふせる。どう答えればいい? 「ふ、雄弁だな。そうか、あの子も知っているのか…分かった、ありがとう。」 上条が一言も喋れず固まっている。 旅掛は手を離した。 「いつか話してくれる事を願うよ。じゃあ戻ろうか…ああ、あの子には私が勘付いた事は内緒、な」 旅掛は戻りつつ、怒りをある男に向ける。 (許さんぞアレイスター!やはり娘を巻き込んでいたか!) 上条は呆然としていた。 一言も喋ってないのに、全部吸い上げられた。 あんな底知れぬ人が将来、義理の父親になる可能性があるというのか? (あ、戻ってきたか) 上条が戻ろうとすると、化粧を直し終えたのか、美琴がベランダから庭へ降りてこようとしていた。 すれ違いに、旅掛に一言かけられ、頷いている。 まっすぐ上条に向かって歩いてきた。 目の腫れぼったさは完全回復といかなかったようだが、そこはアイシャドウとアイラインで目立たなくしている。 可愛らしさは完全復活していた。やや頬が赤いが、この寒さでは普通かもしれない。 美琴は、ある決意を秘めていた。 ―――場面は先程の化粧室に戻る。 「さて、美琴ちゃん」 美鈴は美琴の化粧を手伝いながら、やさしく話しかける。 「な、なに?」 「当麻くんだけどね、さっきこっち戻ってくるとき、ベンチに座ってるの見たんだけど」 「うん」 「あの子、冷静になろうと努めてるように見えたのよね。」 「?」 美琴は美鈴の言いたいことが分からない。 「当麻くんってさ、相当ヤバイ橋わたってきてるんじゃない?」 「うん、しょっちゅう入院するようなケガしてるみたい…」 「でしょうね。だからいざという時、誤った判断をしないように、感情のコントロールをする術が身についてるんでしょう」 美琴は気づいた。 「え、じゃ、じゃあアイツは、冷静に…つまり考え直してる…っていうの!?」 「それは行き過ぎかな。逆に考えてごらんなさい。当麻くんが色々話してくれたんじゃない? その中に、美琴ちゃんの求愛へ応えることに対して引っかかりがあるのかもね」 …あの子か。 『ん、心配ないよ。とうまは必ず帰ってきてくれるもの』 あの子と初めて会った日、そんなこと言ってたっけ。自分の心が衝撃を受けたのを、覚えている。 私を受け入れれば、あの子はどうなる…? 「なんか思い当たることがあったかな?何にせよ…」 美鈴は一気に声のトーンをあげる。 「いい?美琴ちゃん。恋愛は冷静になってやるもんじゃない!一気に燃え上がらせないといけないの! この数時間が勝負よ?きっちり踏み込んで、あの子をしっかりキャッチするの! 大丈夫、扉は開いたんだから!後のことを考えず、彼に飛び込みなさいな。」 美琴は飲まれたような表情をしていたが、やがてコクンと頷いた。 ―――あの子の事はさておき、まず自分。 美琴は一気に上条の目の前まで歩を進め…そのまま上条の首に両手を巻きつけた! あまりの至近距離に上条はたじろぎつつ、赤くなる。 「気づいてた?私、アンタのこと、苗字でも名前でも呼んだことなかった、って」 全ては、この時のため――― 「…私、当麻のこと大好きっ!」 そのままつま先立ちでしがみつき、口許を上条の耳に寄せる。 「私のこと、ゆっくりでいいから、好きになって…お願い」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある両家の元旦物語